第3話 歓迎

「凄い…」


「ハハハッ、そんな事無いよ、この位はね、冷蔵庫の中に飲み物が入っているから自由に飲んで良いよ! ワインにビール、ジュース何でもあるからね!どうせこれから死ぬんだから、未成年なんて関係ない…好きな物飲んじゃえ」


見れば見る程のイケメン、しかもどう見ても金持ちにしか見えない。


どうして、こんな人が自殺なんて考えるんだろう?


全く解らない。


「それじゃ、ジュース貰います」


「あっ、俺も」


「それじゃ、私はワインを貰おう」


「あっ、僕はコーラ」


飲み物を飲みながら窓から景色を見た。


凄く良い景色だ。


川があってその先には遠くに富士山が見える。


今迄辛い人生を歩んできた僕には、この美しい景色が寂しく見えた。


それは他の三人も同じように感じて涙こそ流してないが寂しそうだ。


だが、何故だ…


神代さんだけがうきうきしている様に見える。


多分、気のせいだよな。


◆◆◆


神代さんの歓迎は凄かった。


まさか、バーベキューまで用意されているなんて思わなかったな。


この人はきっと良い人だ。


死ぬ最後の瞬間を楽しく過ごさせてあげよう…そんな気持ちでこんな事をしてくれたのだろう。


「ほら、肉が焼けたよ、泰明くん遠慮しないで食べなよ」


「いただきます」


「ほら、陽子ちゃんも遠慮しない、大樹くんも和夫さんも飲めるクチでしょう? 遠慮しないでジャンジャン飲んで」


「ありがとうございます」


「ううっ、ありがとう」


「ああっ、頂くよ」


僕だけじゃない。


三人も最後の時を楽しく過ごさせてくれようとしている神代くんに感謝しているようだった。


だが、僕にはどうしても気になる事がある。


『どうして神代さんみたいな人が自殺しようなんて思ったのだろうか?』


自殺しようとする人間が此処迄明るく出来るだろうか?


まるで…そう普通にパーティを楽しんでいる様に見える。


『悲壮感』なんて何処にも無い。


どう見てもキラキラ組で幸せな人生を歩む成功者。


そうとしか見えない。


だから、暗黙の了解を破り僕は聞いて見ることにした。


「神代さんはどうして死のうと思ったんですか?」


「えっ!」


神代さんは驚いた様な顔をした…そして急に笑顔になった。


さっき迄の清々しい笑顔じゃない。


禍々しい笑顔だ。


「だって…」


「俺は自殺なんてしないよ…」


「だって…集まって…」


可笑しい、目が霞んできた。


「ようやく効いてきたようだね…料理や飲み物には睡眠薬が入っていたのさぁ…あれれ話の途中で眠っちゃったようだね」


周りを見ると三人も眠っているようだ。


駄目だ…この眠りの欲求に僕は耐えられなかった。


「目が覚めたら、死にたい君達にとっては幸せな時間が始まるよ!俺に感謝しな…」


神代さんが何か言っているが僕には意味が解らなかった。






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