今日はこんな日

手塚エマ

第1話 肉体改造計画

 友人を通して、五十八歳の女性の話を聞く機会がありました。

 彼女の老後設計について、です。

 

 今は、その第一段階。

 六十までに理想の体型になる為に、日々筋トレに励んでいるそうです。


 もともと美意識が高いのか。

 肌も艶々。皺もない。実年齢より十歳はお若く見えます。それなのに。

 いえ、だからでしょうか。


「出る所はちゃんと出て、引っ込める所はちゃんと引っ込める。もちろん腹筋はシックスパットよ。決まってるじゃない。それができたら、SMセクシーボンテージで熟女バーを開くのよ。もう一緒に働くメンバーも決まっているの。彼女達も私に負けず劣らずの筋トレ婆よ」


 あと二年で、ママさんが鞭を持つ還暦ボンテージバーが、お目見えです。

 この方。真剣にふざけていますね。

 私は、こういう人が大好きです。

  

 生き生きしていて楽しそうな老後しか浮かばない。

 

 バーのママさんはボンテージ。

 ホステスさんは、胸元と背中がガバーっと開いた、蛍光色の全身レオタード(全身タイツ?)が制服で、それぞれに赤や青や緑のテーマカラーがあり、腰には同色のスカーフを巻くそうです。


 そんな漫画、ありましたね。キャッツアイ?


 私、きっと男性客が飛びつくと思います。

 キャバクラとか、若いホステスさんの前では男の見栄を張らないといけないプレッシャーがありますが、還暦すぎた人生の大先輩の前では心配ご無用。

 

「あんたにも、いろいろあったのね」


 なんて、全身レオタードのホステスさんに慰められたら泣くしかないでしょ。


 私も、やっぱり大学時代の友人とSMバーでもやろうかと、構想を練ったことがありました。

 悩みや愚痴をこぼしに来た客を、叱り飛ばすホステスと、叱り飛ばされて意気消沈した客を励ますホステスで挟み撃ち。メンタル系のSMバーです。

 

 私は叱り倒す側のホステスに抜擢されました。

 なんで?

 いやいや、私。人様を叱るなんて品がないと、親から教えられて育ちましたよ。だから叱らないけど、怒るかな。

 人生、ナメてんじゃねーぞぐらいは、言うかもしれない。


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