5抄 〜亡くなったはずの親友がなぜかまだそばにいる百合〜
冬のアイスクリーム
〜亡くなったはずの親友がなぜかまだそばにいる百合〜
冬の残滓が、頬をなでてゆく。
いつものこと、たわいない部活帰りのコンビニ。
ベンチにかさなった、ふたりの手。
ひんやりとつめたいこの温もりは、嘘なんかじゃないや。
どこまでも無邪気で、おせっかいで、バカみたいにさみしがりで。
なんかたべる?
アイスたべたい。
おまたせ、ふたりぶん。
さくり、しなるスプーンで少しづつ削ってく。
春のかぜ、もうすぐ君はどこかへと往ってしまうけど、
いまのところ、わたしは大丈夫。
この手に触れていれば、なにもさみしくなんてないから。
どこまでも茜いそら、虹むくも。
だいじょうぶ。ほらね?
涙ひとすじ、泣き笑いぬぐう君の手。
どうして、まだここにいるの?
わたしのことなんかおいて、はやく往ってしまえばいいのに。
つらい。
これ以上わたしに付きまとわないで。
どんなに願っても、これはわたしの幻に違いないんだから。
いつまでもイジワルで、真っすぐで、私はバカとしかいいようのないほど弱虫で。
わたしのこと、好き?
キライなわけないじゃん。
だけど、きみは、もう私の知ってる君じゃないんでしょ?
生きられない少女の、心残り。
──大っ嫌い、なわけないじゃん。
わたしはひとりでも大丈夫だって言ったのに。
それでも気になるからって、心配だからって、そんなにわたしは弱くないのに。
いつか消えてしまうとわかってるけど、
どこまでもわたしはひとりよがりで、臆病だから。
きみがしあわせならそれだけで。
ほろり、雪のカケラ、風ののせて、ほどけるせかいのいたずら。
すべてはマボロシだったのかもしれないけど、
この手のぬくもりは、この胸のきもちは、嘘なんかじゃないから。
おなじ道を、ふたりあるく、夕暮れの帰路。
わすれない二人のかたち、今でもきみはわたしのとなりで、
どこまでも広がる夕焼けの雑踏で、今を生きる少女は繋いだ手を、そっと解いた。
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