第394話 親子のおでかけ
「お母さん、これはちょっと違うと思う」
「う〜ん。こういうのが流行ってるって本で読んだんだがねぇ」
「お母さんどんな本読んだの?」
仲良く親子で買い物に来た2人は、洋服店で翼の服を選んでいた。
雲雀が選んだ服を体にあてがったのを見て首を傾げる。
「私こういうシンプルなのでいいよ」
翼は雲雀の選んだゴスロリチックな雰囲気の服を戻してシンプルなニットのセーターを選んであてがった。
「でもあんまり変わり映えしないけどいいのかい?」
「別に変わり映えしなくても今まで通りでいい。火蓮お姉ちゃんに貰ったのも沢山あるから。でも、お母さんに買ってもらったのも着たいから、おんなじようなのでもいいの」
「そうかい! そしたらそのセーターにしよう! なんなら私とお揃いにするかい?」
雲雀は嬉しそうに笑いながら咥えた飴の棒を指でつまんでくるくると回した。
「冗談だよ。この年になってお母さんとお揃いは嫌だよね」
「いいよ」
「え?」
雲雀は照れ隠しに冗談を言ったつもり出会ったが、翼はもう一つ色違いのセーターを手に取った。
「別にシンプルなセーターだし色が同じじゃなければ並んで着ててもおかしくない」
「確かにそうだね。そしたらお揃いで買おうか」
「うん」
お揃いのセーターを買った後、2人はそのまま食事をして、お土産のお菓子を買って家へと帰る。
「お母さん、次はいつ一緒にダンジョンにいくの?」
「あー、ちょっとお母さんも忙しくてしばらく行けそうにない」
「そうなんだ」
雲雀の返事に少し落ち込んだようすの翼を見て、雲雀は「やっぱりこの日に行こう」と提案したくなるが、魔法を使えるようになるまで昔馴染みに特訓をお願いしてある。翼にカッコいい所を見せるため、喉からでかかった言葉をグッと我慢しつつ、雲雀は話題を変えるように違う話をはじめる。
「今日は博多から黎人の弟子が来てるんだろ? お土産は明太子かねえ。晩ご飯が楽しみだね」
「うん。私会うの初めてだから緊張する」
呑気な雲雀とは対照的な翼の雰囲気に雲雀はニッコリと笑った。
「大丈夫さ。同じ黎人の弟子なんだ。すぐに打ち解けられるさ。ほら、お土産のおやつも買ったんだしお茶しながら少し話せばすぐ仲良くなれる」
「うん……」
「それじゃ、早く帰ろう。お土産が冷めたら嫌だからね!」
「お母さん、ケーキは冷めないよ?」
「それもそうだねぇ」
飴の棒を回しながらケラケラと笑う雲雀の様子をみてため息を一つ吐くと翼は雲雀の手を取った。
「どうしたんだい?」
「早く帰ろ」
「そうだね」
雲雀は翼の手を優しく握り返し、お茶の時間に間に合うように、2人並んで家までかえるのであった。
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あとがき
書籍版『願ってもない追放後からのスローライフ?』第二巻本日発売です!
二巻には二章の追加エピソード多数!
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web版を読んでる人にも楽しんで頂けると思います!是非お手に取って下さい!
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