第387話 目標!

「ほら翼、ちゃんと魔物を見て戦え!」


「ごめん、師匠」


ダンジョンの中程の魔物と戦闘が始まってからの私語を注意され、翼は黎人に謝った。


今日のダンジョン探索では、翼はいつもより口数が多く、黎人に話をしたいのか魔物が現れてからも戦闘に集中せずに話をしながら魔物と戦い始めてしまった。


それができるのは翼がそれ程強く成長したという事なのだけど、それが私語を話しながら片手間で魔物と戦っていい理由にはならない。


それは即ち油断という事で、些細なきっかけが命の危険に結びつくのがダンジョンという場所である。


「今日は早めに切り上げてゆっくり話を聞こうか?」


「ううん、頑張ってステータスを上げて早く冒険者になる!」


翼は黎人の提案に首を振って否定し、指導の継続をお願いした。

翼がダンジョン探索にやる気を見せているのには理由がある。

先程黎人に話していた話もそうなのだが、翼は編入早々に新しい出会いがあったようである。


翼が新しく通う事になった学校は、以前通っていた学校とは違ってダンジョン実習のある学校で、治安はいい。


そして将来の為にステータスの大切さを理解した生徒達の通う学校である。


そんな学校への編入生は珍しかったのか翼は編入早々クラスメイトに好意的に迎えられ、質問攻めにあったのだという。


勿論、クラス全員が聖人君主のような性格ではないので遠巻きに様子見している生徒はいたが、翼を編入生だからとバカにしてくる生徒はいなかった。


そんな学校に通う生徒達だから、将来の為にダンジョンへ通っている生徒も多い。

許可を取れば学校から冒険者マネジメント会社のアルバイトも推薦してくれるので新しい学校の生徒はアルバイトでステータスを伸ばしているようである。


なので、ダンジョンという共通の話題は口下手な翼でも会話できる話題となった。


そんな中で、翼は隣の席の同級生で仲良くなった友達のグループと学期末にあるダンジョン探索の授業でチームを組む約束をしたのだという。


翼はその日までに頑張って冒険者免許を取って入学した時からダンジョン実習をしている同級生達に迷惑をかけないようにしようと決意したのだ。


だから、話をする為に黎人の指導をお休みしている暇などないのである。


何故翼がここまで張り切っているのかを聞いた黎人は、ダンジョン実習までを逆算して翼が冒険者免許を取れるように指導内容を調整する事にした。


学校もあるので、いつかの活発部活娘並のスパルタ指導になるのだが、翼はダンジョン実習の授業に向けて、充実した日々を過ごすのであった。



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あとがき 


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