第386話 編入前日

時間は夜。春風家の家に翼がやって来た。

今は雲雀と下の階に住んでいる翼であるが、勉強する為にほぼ毎日春風家にはやってくる。


ただ、今日は勉強会のない日であった。

にも関わらず春風家を尋ねたのには理由がある。


「師匠、見て。新しい制服」


「翼ちゃん可愛い! 火蓮お姉ちゃん、アンナもおんなじ様なの着てもいい?」


翼が身にまとう服を見てアンナがぴょんぴょんと飛び跳ねながら火蓮に質問をする。


「んー、もうお風呂入っちゃったけど……せっかくだから着替えてお写真撮ろっか」


一度表情を暗くしたアンナであったが、下げて上げる火蓮の言葉にすぐに顔をパァッと明るくして火蓮の手を引いて部屋に着替えに行った。


「うん。似合ってるわ。ね、師匠?」


「ああ。可愛いぞ」


褒められた翼は嬉しそうに鼻を鳴らして頬を赤らめた。


「でも、新しい学校に通うなら私の授業も要らないかしら?」


「え……」


翼が嬉しそうにしたのも一瞬、紫音の発言に寂しそうな顔へと変化させた。


「冗談よ。私達は師匠を中心に集まる家族見たいなものだもの、お姉ちゃんはこれからも教えてあげるわよ」


紫音の揶揄い方は同じ環境で長い事いるからか先程の火蓮とよく似ていた。


翼は表情には分かりにくいが嬉しそうに薄く口角を上げた。


「紫音、お姉ちゃん」


「それは紫音ちゃんだけずるいな? 私も火蓮お姉ちゃんでいいんだ〜」


「それじゃあ翼お姉ちゃんだー!」


アンナは大きな声で翼を呼びながら翼に飛びついた。

凄い勢いであったがステータスの上がっている翼は難なく受け止めた。


アンナの格好は翼の制服に合わせたようなスカートにシャツとベストというキレイめの服に変わっている。


「それじゃ、家族写真……は明日にしましょう。私、パジャマでした」


「私はすっぴんだしね」


女性2人の意見により、今日は翼とアンナの2人の写真だけとる事になった。


翼は、新しい学校へ編入する事になった。


翼がまた学校に行きたいと思ったのには理由がある。

友達を作りたいと思ったからである。


ここに来た初めの頃は友達なんて要らないと思っていた。


しかし、黎人の元で過ごす中で、アンナが友達と仲良くする姿を見守り、アンナが将来友達と冒険者のチームを組みたいと思っている事を知った。


そして、火蓮がたまにランクは違うが友達達とダンジョンへ行っているのを聞いて、その友達達も偶に家にやって来て仲良くランチをしたりしているのも見ている。


それに他の姉弟子にも高校からの友達とずっと仲良く冒険者をしている事も紹介されて知っている。


みんな、自分がこれまで会ってきた同級生ともだちとは違うものであった。


そんな友達が見つかるかは分からない。しかし、そんな親友と呼べる人に出会いたいと思った。


だから、のすすめで新しい学校へ編入する事に決めた。


新しい制服で初めて撮った翼の表情は、普段とは違い、十分に笑顔であるとわかるものであった。



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あとがき 


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