第246話 拍子抜けの電話

クジラワークスの社長織田悠馬は、ある場所に電話をしていた。


「坂井さん、あれはガンみたいなものですよ。一緒に居るだけで他の候補生をダメにする」


『やっぱりあかんか』


「ええ。これは春風さんでも無理だったんじゃないですかね?」


『そこまでか。まあもともとレイ坊に頼んだんは3人は士官候補生から外れる予定やったけど、個人成績の良さから単独戦力を鍛えたら士官候補生の枠に収まらん人材になるんやないかとおもたからやしな』


「そんな人材なら早めに言ってもらえれば永井だけ別に指導しましたよ?」


『ええわ。お前に任せた時点でアレに興味はないからな』


「だったらなんで俺に任せたんですか?」


『そりゃ、レイ坊の前で喚かれて他の2人までレイ坊に拒否されるよりはアレの言うこと聞いてお前に押し付けた方がええやろ?』


「そう言う事ですか。なら、遠慮なく士官候補生失格を言い渡しますかね。それか、ソロの道があると伝えてみますか」


『その判断は任せるわ』


「ほんと、めんどくさい事押し付けないでくださいよ」


『あはは、また今度美味いもんでも奢ったるわ』


「なら、黄昏御用達のラーメン屋が良いですね。あそこはお金では行けないですから」


『お前が表から行ったら騒ぎになるもんな。分かった。また連れてったるわ。かんにんやで!』


電話が終わると、織田はため息の混じった渇いた笑いを吐いた。


電話をする事に緊張していた自分が馬鹿らしくなる。


今回の依頼は、正直な所坂井の依頼でなければ政府からだろうと受けていない。


黄昏の恩恵を受ける日本の冒険者として、期待に応えたいと思っての事だ。


あいにく、自分にはリーダーとして仲間や社員を引っ張っていく才能はあっても、人を育てる才能がない事は理解している。


だからこそ、低ランク帯の指導冒険の中でも、成績トップの森田と、クジラワークスが大きくなる為に尽力してくれた楓の教え子の金田を今指導している冒険者達の配置換えまでして指導冒険をしてつけて教育に挑んだ。


その結果、変なのを後で押し付けられていた訳だが、話を聞いて、確かに春風さんに向けて文句を言われるよりは俺に押し付けた方が良いのは確かだと納得してしまう自分がいる。


せめてもっと早くにそれを伝えておいてくれればそう言う物として対処したのに。


まあ、坂井さんは昔からああいう人だからな。


真面目ではないひょうひょうとした態度があの人の持ち味なのだ。


どちらかと言うとあの人が裏ではなく表で政治に関わっていることの方が違和感がある。


これも春風さんの指示なのかもしれないけど。


これだけの地位についても雲の上の人達の考えは分からない。


とりあえず、森田と金田にちゃんとした指導をさせる為にガンの排除をしてしまおう。


織田は受付に、預かっている警察、自衛隊のチームが帰ってきたら、指導冒険の森田と金田、それから永井を自分の部屋に来るように伝言を伝えるのであった。






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