第216話 ニュース1
ある事件が起きた。
新潟にある百貨店経営社長が、夜道で殴る蹴るの暴行を与えられて死亡した事件だ。
犯人はすぐに逮捕された。
百貨店備え付けの防犯カメラに犯行が映っていた為である。
犯人は被害者が経営していた冒険者マネジメント会社の元社員で、倒産し、職を失った腹いせに殺害したと自供している。
犯人は5人組の冒険者。正確には元冒険者で、素行の悪さから冒険者ギルドからブラックリストに入れられていたグループである。
このニュースは全国で放送された。
報道各社はそれぞれに取り上げて、世間でも話題のニュースになった。
そのニュース関連から飛び火して、取り上げられたニュースがある。
事件が起こった新潟市には、店の経営者が全員冒険者と言う変わった商店街が存在する。
そのニュースは話題を呼び、報道各社は取材に訪れる事もあった。
「こちらは、今話題の冒険者商店街となっております。早速、町の人にインタビューをしてみましょう!」
新人のレポーターが、通りかかった学生を呼び止めて、インタビューを行っている。
「すみません、この商店街についてお話を聞いてもよろしいですか?」
呼び止められた学生3人組は快くインタビューを受けた。
「それでは、今学校からお帰りですか?」
「はい、部活の帰りで」
「この商店街は冒険者の方が経営していると噂になっていますが回り道しなくても大丈夫ですか?」
レポーターの質問に、学生達はキョトンとした顔をした。
この商店街はレポーターの女性が言う様に、入っている店舗の店主全員が冒険者である。
紗夜の弁当屋も、この商店街にある。
冒険者を始めてから、更に繁盛し始めた紗夜の弁当屋は商店街の中でも話題になった。
弁当を作る時のパフォーマンス、暴漢が来ていて客足が遠のいていたのに、それも寄り付かなくなって、経営が安定してきた。
商店街だからこそ、横の繋がりは広い。
冒険者を始めた紗夜の話を聞いて、商店街の店主達は冒険者に興味を持った。
そして、タソガレエージェンシーの噂を聞いて、夜間のパートの如く、皆が冒険者になったのだ。
稼ぎは経営の足しになり、腰をいわしていた魚屋の旦那は腰痛が回復して重い物も持てる様になった。
全員が冒険者になった事で、話題を呼んで、商店街は繁盛している。
しかし、このレポーターのインタビューは、ネガティブな質問であった。
安に、冒険者がいる所を通って怖くはないのか? ここは冒険者による殺人事件が起きた場所だろう? そう質問している様にも聞こえた。
繁盛する商店街の前で、か弱そうな女子学生に声をかけたのも意図があっても事であろう。
その質問に、インタビューを受けた学生達は笑いはじめた。
「お姉さん、考え方が古いし、ニュースキャスターさんなのにニュース見てないんですか?」
キャスターではなくレポーターなのだが、学生だからその差は分からなかったのだろう。
「一昨日のニュースでは東京で傷害事件がありましたし先月は学校のいじめで自殺のニュースがありましたけど、両方とも加害者は一般人だったじゃないですか。冒険者と一般人に分けて考えるのはおかしいですよ?」
「でも、冒険者にら襲われたらどうするの?」
レポーターは、ムキになった様にそう質問した。
「そんなの、冒険者じゃなくても男性なら私達位の学生でなくてもお姉さんが襲われても抵抗できないですよ。女性でも、ナイフとか持ってたら終わりですし」
「私達も卒業したら冒険者になる予定ですよ?その方が自衛にも、なるじゃないですか」
学生達の真っ当な意見に、女性が反論しようと口を開こうとした時、インカムに連絡が入った。
この放送は夕方のニュースとして生放送されており、スタジオから連絡が入ったのだ。
しかし、レポーターの返事がない事に話が終わったと思った学生達は、挨拶をして商店街へ向かっていく。
「それじゃあ、私たちはこの後お弁当屋さんにコロッケを食べに行くので」
「美味しいですよ!ほんのり甘くて」
「早く行こー、部活で動きすぎてお腹ペコペコ。私今日2つ食べようかなー?」
それが、夕方のニュースで流れて話題になったシーンであった。
このレポーターの様に、まだまだ、冒険者を悪く言う意見もある。
しかし、大半の日本人の意見は、冒険者に肯定的である。
やはり、まだ数年前に起こった日本の大不況の時に一般人を救ったのが冒険者だと言う事実が大きい。
反対意見の大半は、あの時に学生だったりで冒険者に助けられた意識の薄い者が多い。
先程の様な大学を卒業したばかりの者に多い。
男女差別問題などの様に、この問題はいつまで経っても無くなることはないだろう。
勿論、こんなニュースばかりではない。
他の局のニュースでは、商店街の人気の弁当屋として、紗夜の弁当屋にインタビューが入る事になっている。
撮影の日、緊張で朝からソワソワしている紗夜の姿があった。
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