異世界でハクスラ生活
ダークネスソルト
酒場の会話はプロローグ
とある冒険者ギルドの酒場にて二人の中級冒険者が酒を酌み交わしていた。
「なあ、今最も勢いのある冒険者って誰だと思うよ」
「またその話か。好きだなお前も」
「当たり前だろ。そういうお前だってこの話好きだろ」
「まあ、酒の肴にはピッタリだな」
「ハハハ、確かにそうだな」
「それで、今最も勢いのある冒険者って言ったら、アイツしかいないだろ」
「やっぱりか?俺もアイツしかいないと思ってた所だ」
「【迷宮狂い】【戦闘狂人】【蹂躙の踏破者】【命知らずのクレイジー】【魔物殺戮者】【悲しき復讐者】【殺戮マシーン】【魔物絶殺者】、まあ、色んな二つ名で呼ばれてるが、一個だけ確かなのはここ最近現れた冒険者の中じゃぁ、最も狂ってて最も強いってことだな」
「違いねえな。なんならかれこれ10年以上迷宮に潜り続けてる俺らより強いだろ」
「何言ってんだよ。当たり前だろ」
「そうだな。いやはや、先輩として悲しい限りですな」
「とかいって、一切悲しいとか思ってないだろ。というかお前にそんなプライド存在してないだろ」
「あ、バレた。まあ、余計なプライドなんてあった所で、無駄死にする可能性をあげるだけだからな」
「それもそうだな。しっかし、【迷宮狂い】はマジで凄いよな」
「確かにそうだな。このギルドに初めて顔を出してから1か月間、一日たりとも休むことなく迷宮に潜り続けて、狂ったように魔物を虐殺してんだから。それは俺らなんかよりも強くなるのは当たり前だな」
「そうだな。俺らなんて、一回迷宮潜ればそのお金でこうして安酒飲んで、女抱いて、飯食って、自堕落に1月くらい過ごして、お金が尽きたらまた潜るっていう酷い生活を送ってるからな」
「何言ってんだよ。大体の冒険者の潜り方はそんなもんだろ」
「ハハハ、違いない、それもそうだという話だ。迷宮なんていう命をチップに人間様をはるかに超える化け物共と本気で殺し合いをする場所に毎日潜るなんて。正気の沙汰じゃないからな」
「ああ。俺らには絶対無理だな」
「いや、俺らどころか、大体の冒険者全員無理だろ」
「まあ、それが出来るやつが、【迷宮狂い】みたいに強くなれるんだろうな」
「いやでもどっかで野垂れ死にそうだけどな。迷宮なんて狂った場所に潜ってんだ。いつ死んだっておかしくはない。という訳で【迷宮狂い】が死ぬに銀貨1枚」
「ハハハ、お前、昨日も同じ言葉言って、俺に銀貨1枚払ったの忘れたのか」
「あ~。昨日は酒飲み過ぎて全然覚えてねえや」
「お前なぁ、酒は飲んでも飲まれるなだぞ。どっかの偉い人だか勇者様だか、エロい人だかが言ってただろ」
「ああ、そういえばエロい人が言ってたな。異種族ハーレム作って、24人の女性を孕ませた魔王殺しを成した伝説の勇者様がな」
「ハハハ、そうだろそうだろ、エロい人だよな勇者様は」
「まあ、でも英雄色を好むって言葉もあるし、それが普通じゃないか?それに強い=お金を稼げる=女性をたくさん養えるって意味だもんな。問題はないだろ」
「それもそうだな。じゃあ、【迷宮狂い】も行く行くはハーレム作るってことか」
「馬鹿かお前は、あの【迷宮狂い】だぞ。頭のネジぶっ飛んだ狂人だぞ。しこたま金を稼いで、そのほとんどを装備品とアイテムにして迷宮に潜る為に投資する。何が楽しくて生きてんだって奴だぞ。あり得ないって」
「確かに、あの【迷宮狂い】が女を買ったって話は聞いたこともない死、酒を飲んだって話も聞かないし、飯もいつも栄養さえ取れればいいって感じで喰ってるもんな」
「本当に、何を楽しみに生きてるのやらやら」
「それは、アレだろ。魔物を殺すことじゃないのか?ホラ、二つ名の中で偶に言われてるじゃないか【悲しき復讐者】って、多分だけど、小さな村に住んでたが魔物の群れによって襲われて壊滅。全てを失い、悲しみに明け暮れ、魔物への殺意だけが残った的な?」
「確かにその噂はよく聞くな。でも本人は否定してなかったか」
「馬鹿野郎、そんな重くて悲しい過去思い出したくないし、わざわざ他人に知られたくもないだろ。だから隠してんだよ」
「ああ、その可能性はあるな」
「まあ、どちらにせよ。こんな狂ったように迷宮に潜り魔物を殺してんだ。何か並々ならぬ事情があることには間違いないだろうよ」
「それは俺も同意だな」
「という訳でそんな【悲しき復讐者】こと【迷宮狂い】に乾杯」
「お~、乾杯」
そうして二人の中級冒険者は安酒をまた呷るのだった。
――――――――――――――――
ダンまち読んでたら書きたくなって生まれた特級呪物。
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