レジンアートのオルゴナイト

 レジン樹脂で作るアクセサリーを検索していると、ピラミッド型の置物に出会うことがある。


 オルゴナイトといって、海外のニューエイジ、いわゆるスピリチュアル界隈で人気のグッズだそうだ。


 まずはこの形、ピラミッド型が重要らしい。

 封入する素材にもコツがある。まず必ず金属片や金属ワイヤー、金属粉を入れる。

 そして水晶など天然石と言われる鉱物を入れる。


 そしてレジンを型に注ぎ込んで封入すると、その圧力が鉱物を振動させて、金属や他の材料にも伝わって外部に何やら良い波動? になって持ち主や環境に良い影響を与えるそうで。


 その波動がオルゴンエネルギーと呼ばれることもあるらしく、だから名称がオルゴナイト。


「どういう理屈なのかしら。ふわっとしかわからないなあ」


 英語サイトで調べるとニューエイジ、いわゆるスピリチュアル系のサイトやブログで紹介されていることが多い。日本だとスピ系と簡単に縮めて呼ばれているやつだ。


「パワーストーンみたいな感じなのかなあ」




 このオルゴナイトの話を小料理屋ひまらやのおじさんたちに話してみると、ご年配の皆さんには変な宗教かと思われてちょっと嫌な顔をされてしまった。


「あはは。あたしもそんな感じかなって見たとき思ったんですけど」


 ところがひとりだけ、カレンの話にピンときた人がいた。いつもお洒落なインポートもののジャケットとベレー帽の院長さんだ。


「腕時計だとさ、クォーツっていって中に小さい水晶を入れて、その振動を利用して時を刻ませるんだ。そのおるごないとってやつも似た原理を利用してご利益だなんだって言ってるんじゃないかな」


 その後、詳しく解説されたサイトを見てみるとズバリだった。

 オルゴナイトは電磁波の悪影響を防止するそうで、実際に電磁波メーターで測定してみると周辺の電磁波を撹乱させるそうだ。

 それが電磁波の防御になっているらしい。




 このオルゴナイト、恋人のセイジはその手のものには疎いそうで、カレンの話を聞いてくれるだけだった。

 ただ、彼もひまらやのおじさんたちと同様、あまり興味はなさそうだった。


 詳しかったのは区民会館のレジン教室の会員、占い大好き主婦の茉莉さんだ。


「知ってる、知ってるわよう~! あたし自分で作ったやつあるわ、次の会のとき持ってくるわね!」


 仲間を見つけたとばかりに大興奮された。

 好きな人は好きなグッズのようだ。


「オルゴナイトか。あれ良いよね、オレは金属の歯車を入れて魔法剣の形に作ったやつがあるよ。中身は水晶とかラピスラズリとか……」


 彼はファンタジー物語の世界観でレジンのアート作品を作っている。

 たまに専門誌に作品の写真も掲載されているぐらいだ。


「義明君も知ってたのね」

「ご利益云々はよくわからないけど、オルゴナイトは中に入れる素材を工夫すると、LEDライトの台座に置いたときすごく映えるよ。参考になりそうなのは……」


 その場で講師の義明君がスマホで、海外の通販サイトアプリを開いて見せてくれた。

 単純にオルゴナイトの英名で検索すると、20ドルから数千ドルまでの価格で多種多様なものがある。


「わ、すごい。惑星が光ってるように見えますね」

「こっちは生命の木。宗教や文化的なシンボルを使うの、海外ではよくあるね」


 そういえば毎回、このアクセサリーの会には主催者の講師義明君が、参加者たちが参考にできるよう、シンボル図鑑などの資料を持参している。

 カレンもクラウドファンディングが成功した後、自分の事業の経費で同じものをいくつか購入していた。


「そうそう。邪気祓いや黒魔術の防御なんて効果もね」

「す、すごいですね……本当ですかそれ?」


 ちょっと怖かったが、英語サイトで検索してみるとブラックマジックをガードしてどうの、というグッズは結構出てくる。


「んふふ。あたし、ピラミッド型のレジン型たくさん持ってるわよう~。カレンちゃん、作ってみるなら貸してあげる」

「あ、じゃあよく使われるサイズのやつお願いします!」


 そんなわけで5センチから15センチほどまでの3サイズの型を借り受けることになった。

 上手に作れたらマンションの玄関にでも置こうかなと考えている。


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