周りにはバレバレでした

 その後どうなったか?


 バスで降りるとき、カレンが先に降りて、セイジはひとつ先のバス停が最寄りになる。

 いつもならバスの中で別れるのだが、この日はセイジもカレンと一緒に降りた。


「コンビニでも寄るの?」

「いや、そうじゃないんだけど……ん、やっぱり寄ってこうかな。酔い覚ましにコーヒーでも飲んでかない? 奢るよ」

「奢りなら大歓迎!」


 カレンのアパートのすぐ近くにコンビニがあるのだ。

 深夜前ならイートインスペースが開いているので、そこでホットコーヒーをふたり、飲みながら雑談をした。


「青山、初詣って行く人?」

「行くけど元旦は避けるわ。参拝客が落ち着いた3日の午前中あたりかな」


 今年はトラブルに巻き込まれて無職になってしまったし、地元の有名神社でご祈祷してもらおうかなと思っている。


「行くなら俺も行きたい。出店のたこ焼き、好きなんだよなあ」

「わかる。あたしはじゃがバター一択」


 コーヒーを奢って貰ったので、お茶請け代わりにカレンが買ったチョコレートを楽しみながら、正月明けの予定をセイジと立てた。




「えーと、それでさ」


 時刻はまだ夜の8時頃だったが、コンビニのイートインスペースにはカレンとセイジ以外の客はいなかった。


「その。中学のときから青山のこと好きだった。今、彼氏とかいないなら付き合ってくれたら嬉しい、んだけど……」


 恥ずかしそうにちょっと視線をコンビニの外に泳がせた後で、しっかり顔を見て告白された。


 ぽと、とカレンの指先から摘まんでいたチョコレートが落ちた。


「え。まじで?」

「マジ」

「先越されたあああ……先に言われちゃった」


 両手でカレンは顔を覆った。

 そして、ちら、と指の隙間からセイジを恐る恐る見た。


「会社辞める前から、すごく親身になってくれたから。ひまらやみたいないいお店も教えてくれたし、よく付き合ってくれるし。脈ありそうだなーって」

「……返事、貰える?」

「………………喜んで!」


 その後、何となく別れ難くてアパートの部屋に誘ってしまったカレンだった。


 そうして翌日も元旦も三が日も、仕事が始まるまで何だかんだ理由をつけてふたり、毎日会っていた。

 何せ、互いの家は徒歩で十分も離れていないので。




 そして正月明け、臨時のアルバイト先のセイジの勤め先の弁護士事務所で、皆にお付き合いのご報告をした。


「そうなるってわかってた」


 ニマニマ笑う弁護士事務所の皆さん。

 どうも、カレンとセイジ、ふたりのことは周囲から大変暖かく見守られていたらしい。


「ご結婚はいつ?」

「もう、所長も皆さんもやめてくださいよ! 今の彼女にプロポーズして金目当てって思われたらどうするんですか!」


 会社からの退職金に解雇予告手当、慰謝料、それにクラウドファンディングの支援金。

 まとまった貯金が今のカレンにはある。


「カレンちゃん、ほんとに彼と結婚するなら相談して。婚前契約書を作って、手持ちの財産の権利を守れるようにしてあげるから」

「はーい!」

「もう……」


 さすがに弁護士はその手の契約ごとに強い。

 いざというときには、遠慮なく世話になろうと決めたカレンだった。



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