快進撃は続かなかった
講師をやらないか、の誘いを受けてから1ヶ月後、十二月の半ば頃に単発の公認教室を開催してみることになった。
ちょうどクリスマスシーズンなので、ヒイラギの葉を模した木製パーツと組み合わせたレジンアクセサリーを作ると講師の義明君と決めた。
公認教室というのは、営利目的で開催できる講座のことだ。
会場はこれまでと同じように区民会館を利用できるが、利用料金が上がることと、講座の内容に対して区の審査が入る。
既にサークル活動として数年の運営実績があったので、審査自体は問題なく通ることができた。
ただ、試しにレジンアクセサリー作り初級講座を開催したものの、思ったように参加者が集まらず2回目以降の開催予定は立たなかった。
それでも3千円の参加費で8人が集まって、商業利用の施設利用料等を差し引いて16800円の利益が出た。
「利益の半額を講師とスタッフで山分け。残りの半分はサークルの活動費に」
講師はカレンと、元々のサークルの主催者義明君、スタッフは会員のご年配のおばさま3人の計5人。
利益の半分を五等分して一人当たり1680円となった。
「まあ、その報酬1680円も、帰りに皆で食事会に行って使い果たしちゃいましたけどねー」
弁護士事務所でのアルバイト帰り、定時上がりのセイジとやってきた地元の小料理屋ひまらやで、そう溜息をついたカレンだった。
「敗因は何だったの?」
「東銀座だから、銀座のお洒落な場所かと思いきや、区民会館ですからねえ。駅からもちょっと遠いし、その辺が敬遠されちゃったのかも」
あの後よく調べてみたら、実は銀座のほうにいくつか若い女性向けのお洒落な駅近の会場を使ったレジンアクセサリー作りのカルチャースクールが見つかった。
「銀座の駅前には有名な自作アクセサリーのパーツのお店があるんです。そこが会場だと勘違いしてた人もいたみたいで……」
要するに銀座地区の競合と比べられて負けてしまったわけだ。
彼らと比べればカレンたちの公認教室のほうがずっと廉価だし、参加者ひとりひとりにきめ細やかな対応ができていたとは思うのだけれども。
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