なんか悪化したんですけど!?

「申し訳ありませんが、報告を上げるにしろ何にしろ、書面で会社側から指示書をいただけないでしょうか? 課長から口頭で言われるだけだとよくわからないので。何か間違いがあったら困りますし」


 昨日、スーパー銭湯で再会した同級生セイジのアドバイス通りに、例のパワハラ上司からまた「副業副業」と騒がれる前にそう伝えたカレンだ。


(先手必勝! 先に言ったもん勝ち!)


 当然、課長単独の嫌がらせに過ぎなかったわけかので会社側から副業申請などの書面など報告義務もなし。

 そもそも、副業といえるほどの活動でもないのだ。


 案の定、飴田課長は機嫌悪そうにしているものの、その日はもうそれ以上カレンに何か言ってくることもなかった。




 今度こそ終わりか、と思って気を抜きかけていたカレンだが、しかし甘かった。


 有給を週一取得するようになって、課長の心象が更に悪化した。


「通院のための有給申請です。部長から課長に話を通してくれると伺ってましたけど」

「僕はそんな話聞いてない!」


(げっ。あの部長、結局それなわけ!?)


 今どきホウレンソウでもないが、報告も連絡も相談もクソもない。

 庶務課上司は課長も部長もろくでもないことが判明した瞬間である。




 それからどうなったか。


 数日経ってみると、カレンは社内の移動時、件のクソ上司に付け回されるようになっていた。


 昼にランチを外に食べに行くだけでも、「食事に出る振りで副業やってるんだろ」などと言いがかりまでつけてくるようになってきた。


 そろそろ本格的にカレンの精神状態がヤバい。


「はあ……どうしよ」


 他部署の事務用品の消耗チェックに来て、庶務課に戻る前にカフェスペースの個室に避難したカレンはまだ午前中なのにすっかり消耗していた。


「うう。セイジ君、全然ダメだったわ……」


 まだ胃が痛いのでハーブティーを飲み飲み、同級生にスマホからメッセージを打った。


 すると、一分くらいですぐ返信があった。



『愚痴くらいなら聞くよ。もう週末だし、今夜時間あるなら地元の小料理屋でも行かないか? 安くて美味いよ』



「行くわ。帰ってご飯作る気力もないもの」


 かわいいパンダが大きく「了解!」とポーズを取っているスタンプで返信完了。


「あと半日……カレン、ファイトー!」


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