闘神と呼ばれた男
西山景山
第一章 脱出不可能な監獄
エピローグ
辺りに響いた銃声は、全ての終わりを書き綴る。
「さようなら、愛しき人よ」
少女は嗤う、白銀に光る凶器を俺に向けて。
「っ、愛情表現にしては少し過激じゃないか?」
胸に感じる強い痛みが、視界を朧げにする。少女の姿を上手く視認できない。嗤っている、それだけは分かる。
母も妹も、大切な家族は皆、彼女に殺された。
憎しみだけが俺を動かし、復讐だけが俺の生きる意味になった。
同じ思いを持つ仲間と共に、ようやく"殺人鬼"を追い詰めた。そのはずだった。
「何から何まで詰めが甘いんだよ。ボク相手に密室で二人きりになったのも。銃を持つ相手に拳一つで立ち向かうのも」
何も無策で挑んだ訳ではない。勝つ算段はあった。
だが、後一歩足りなかった。
「結局、キミは復讐に生きると言いながらボクへの殺意を生み出すことは出来なかった。まあ、キミらしいと言えばキミらしいけど」
意識が遠のくのが分かる。死が近づいているのが分かる。自分が失敗したことが分かる。
だから、そうするしかなかった。
「すまねえ、失敗だ。あとは任せる」
俺たちの声に耳を澄ませているはずの仲間に一言、声をかける。
「? キミは何を言って、っ!?」
少女が訝しげな声を上げると同時に凄まじい爆発音が鳴り響き、地面が震えた。
「なっ!? まさか、この場所ごと破壊するつもりかい!?」
揺れは収まるどころか、絶え間なく続く爆発音の数に比例して大きくなる。
「なるほど。自分の手では殺せないから、自分ごと仲間にボクを殺させる。そういうわけか。
......くだらない。それが"逃げ"だと、なぜ気づかない!?」
天井も壁も、今にも崩れ落ちそうだ。
「俺たちの目的は、お前を殺すことじゃない」
乾ききった喉を動かし、声を絞り出す。
「俺たちの復讐は、お前にもう誰も殺させないことだ。その為なら、お前と共に地獄に堕ちたって構わない」
俺たちの周りを灼熱の炎が取り囲む。
「ボクたちは決して地獄になど行けない!! ボクたちは輪廻して別の世界に生まれ変わる!!
また繰り返すんですよ。同じ過ちを、同じ悲劇を」
輪廻転生、か。もしも本当に生まれ変わることがあるのなら。
「ボクはまた、キミの大切な人たちを殺す。そしてキミはまた復讐に身を焦がし、ボクを殺そうとする。だから、その時は」
だったら、その時は。
「ちゃんとボクを殺してください」
もう誰も、死なせはしないーー
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