透明の野球

結望人

プロローグ 透明の野球選手権大会

「カキーンッ」真っ青な空へ浮かび上がった白が、そのままレフトスタンドへと吸い込まれていくように消えていった。ホームランだ。「ガタッ!」打った瞬間、私は思わず立ち上がりボールの行方を追った。ボールがスタンドへ消えていった瞬間、歓喜の声を上げそうになったがぐっと堪え、スタンドで1人手が痛くなるほどの拍手を送った。ホームランを打ったのに声は1つもない。夏の大会の代名詞ともいわれるブラスバンドも、チアリーディングも、観客も、ウグイス嬢も、全てない。聞こえるのは選手たちのかけ合う声とバットがボールを捉える音だけ。まるで何か別の競技を見ているようで、球場は不思議な雰囲気に包まれていた。

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透明の野球 結望人 @hope_n

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