第5話 サンスベリア本部
サンスベリアの本部は、とにかく広い。これは初見殺しと言っていいほど、説明を受けなかったら間違いなく迷うだろう。
「ここが、ミーティング前に少しお話をした場所となるエントランスになります、この建物のほとんど中央にあるため中央玄関とも呼ばれます」
ここに辿り着いたら建物の大体中央に位置していると思ったら良いのか。にしてもエントランスだけで広すぎるなここは。
「広いよねここ」
隣にいたモモが喋りかけてきた。
「ああそうだな」
「こんなに広いと迷っちゃいそう」
なんかモモには方向音痴の雰囲気がある。
「しっかり説明聞かねえとな」
「私説明とか聞くの好きじゃないんだよねー」
会って間もないが、その言葉に納得できるわ。
「ほな勝手に迷っとけ」
「ええ?カミセは助けてくれないの?いじわる」
「ほら動き出したぞ」
「ねえ無視しないでよー」
アカマツさんが、喋り終えて次の目的地に向かうようだから、俺はなぜかいじけているももの手を引っ張って集団についていく。全然アカマツさんの説明が頭に入ってこない。俺は少しイラッとしている。
「わお、私と手繋ぎたいの?」
なんかモモが目をキラキラさせて言ってくる。
「ちゃうわ!」
俺は素早くモモの手をほどく。
「なんだー、期待しちゃったのにー」
なんなんだこいつは。なんでこいつと俺は一緒のチームなんだ。
俺はモモに構わず先に進んでいった。
「ちょいちょい無視すんな!」
モモが小走りして俺に追いつき、俺の頭に軽く脳天チョップをする。
「いてっ、もうさっきからなんなんだよ!」
モモのかまってに付き合いきれなくなった俺は少し怒り気味に言う。
「仲良くしよ!一緒のチームなんだからー!」
え、俺の質問の答えになってる?
「後の3人に賭けるか」
「え、私は?」
モモが自分自身に指を差す。
「ハズレっしょ」
俺はサラッと言った。
「何回言ったらわかるの」
俺の左頬に激痛だ。
「嘘やって、いや嘘ではないけど、うん仲良くしよ」
俺は左頬を押さえながらモモに握手を求めた。同じチームになってしまったのだから受け入れるしかない。
「よっしゃよろしく!」
モモは握手に応じ、俺の手を勢いのままに振りまくる。
「いてーわ!」
「ふふふ、たーのしい!」
俺はモモの手を払った。この先が心配で仕方ない。
俺たちは階段を上がり2階に上がった。
2階はこの1階のエントランス部分を空白にして、2階からこの1階のエントランスを見下ろすことができるようになっている。そしてそのエントランスの中央に当たる部分の2階の天井に豪華なシャンデリアがある。写真で見るような高級ホテルのエントランスよりもずっと豪華に見える。
「ほらさっきまで私たちがいたとこだよ」
モモが1階エントランスを指差す。
俺は無視をしたので、
「おい無視すんなあ!」
モモは俺の頭にまた脳天チョップをする。
「いてっ」
入り口から入ってきて左手に進むと男子寮になり、右手に進むと女子寮になっている。
また、1階の入り口から入ってきて正面にあるインフォメーションの脇の道を進んでいくと、サッカーコートやバスケコートなどスポーツができる広大なスペースになっている。パルクールのところで、訓練をしたりするそうだ。
「このパルクールの場所で、敵との戦いを想定した訓練などもしていく予定ですよ」
しんどそうだが、絶対にやっていかないといけないことだ。
「訓練がんばろ?」
モモが俺に言ってくる、さっきまでとは変わり良いことも言うもんだ。
「お、おう」
モモとグータッチをする。
俺たちはもう1度エントランスに戻ってきた。
「ここからは男子寮、女子寮分かれて案内をしていくので男子は私が、女子はレモンさんに案内してもらいます」
アカマツさんがそのように言うと、
「あーじゃあここで一旦お別れだね、寂しくて泣くんじゃないぞ」
横にいたモモがウインクをして俺にこう言った。
「ふん、嬉しくて泣いちゃうわ」
俺は少し嫌味ったらしく言う。
「うるさい」
モモが俺に脳天チョップをする。さっきより少し強い。
「いてっ」
アカマツさんの案内で男子寮に入っていく。
「そろそろお腹も空いてきたことでしょう、ここで昼ごはんを食べましょう」
俺たちは食堂に入り、アカマツさんがそう言った。
「ここでバイキング形式となっていますので、お好きなものをお食べください、ただ体重管理などはご自分でしてくださいね」
おーーバイキングか。でも確かに、訓練とかをしていくと考えたら食べ過ぎとかは良くないな。でも魅力的なものが多いからどれも食べたくなる。
「女子寮の方が食事が美味しいとか言われたりしてますけど全然そんなことはないと思います、男子寮ならではのスタミナ丼なども頼むことができますしね」
アカマツさんが和やかに言う。へーそんなこと言われてたりするのか。俺からしたら自分が美味しく感じたらそれで十分だ。
俺は、料理を取ってきて席に座る。食べ始めようとすると1人の男の子が向かい合った席に座ってきた。
「相席いい?」
その男の子は言う。
「うん、いいよ!」
笑顔で応える。
「へーこのあたりに住んでいるんだ」
食事中、会話をし俺たちは仲良くなった。この男の子の名前はユウヤだ。茶色がかった髪に、透き通った目をしている。イケメンだ。
俺は、寝坊しても間に合ったくらいこの建物が建っている「新西の摩天楼」は地元である。対してユウヤはここから電車を乗り継いで3時間くらいの町、「星屑の草原」出身らしい。
「本当に地元とは違って、高い建物がいっぱいだなこのあたりは」
星屑の草原は遠いうえに行くあてもないので、行ったことがない。夜に見える星空は感動ものらしく、それは生涯で1度は見てみたいと思うが。自然がいっぱいだそうで、そんなところに住むユウヤにとってはこの辺りは刺激が強いだろう。
たわいもない話をユウヤとこの食事中にして、より一層仲良くなれた。あの迷惑金髪野郎を除いてサンスベリアでの友達第1号だ。
こうして昼ごはんのバイキングを済ませ、施設案内が再開した。
「ここがあなたたち個人の部屋になります、一応1人1部屋ありますので自分のスペースは存分にお使いください」
おお、ふかふかそうなベッドもあるし、なんていうか普通にホテルの1室みたいなものだ。各部屋にはきちんと風呂、トイレ、クローゼット、冷蔵庫、そしてキッチンなんかもある。本当にこの部屋で生活を完結させることができそうだ。
「ゴミ屋敷にはしないでくださいね」
アカマツさんは笑いながら言う。
「カミセは部屋綺麗?」
ユウヤが聞いてくる。一概に綺麗とは言い切れないが、汚くはないと思う。
「まあ、常識の範囲内だと自分では思っとるよ」
「そっかー、ならカミセには定期的に、そのー、俺の部屋に来て欲しいな」
「てことは……」
「そう、片付けとか苦手なんよねー」
ユウヤは笑いながら言う。
「はは、いいよ手伝ってやるよ」
面白いやつだなと思って思わず笑ってしまう。
「うん頼りにしてる!」
男子寮もひと通り1階から2階まで巡回し、1階のエントランスに戻ってきた。
女子チームも同じタイミングでエントランスに戻ってきた。
そして再び男女合流し、エントランスの真ん中に集合した。
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