【短編】才色兼備・品行方正の生徒会長、俺が集めたエロ本を物色する
羊光
平成初期①
「おっ、今日はこっちの帰り道を選択して正解だったな」
中学校からの帰り道。
今日はいつもと別の道を選択した。
この道を通るのは二週間ぶりだ。
俺は二週間に一回くらいの割合でこの道から帰る。
理由は簡単だ。
この道には時々、エロ本が捨ててある。
俺の目的はエロ本の回収だ。
それに明日は雨が降る予定だから、今日の内に回収しなければ、宝物が台無しになってしまう。
「おお、エロ漫画に、ヌード写真集の二点セットだ」
今日の収穫は二冊だった。
俺はこれをバックの中にしまう。
田舎の裏道、人の気配は無いが、この瞬間はいけないことをしている気がして、鼓動が早くなる。
エロ本を回収した俺は自転車に乗って、急いでその場から立ち去った。
早く回収したエロ本の中身をきちんと確認したい。
俺は一心不乱に自転車を漕ぐ。
しかし、エロ本は家に持ち込まない。
俺は自分の部屋を持っていないので、こういったものを隠す場所が無い。
でも、俺は丁度いい場所を知っている。
森の中にある廃墟だ。
昔は何かの工場だったのかもしれないが、詳しいことは分からない。
この工場の生い茂った木々の中に一台の乗用車が捨ててある。
俺は鍵の壊れたトラックを開けた。
中には拾ってきた
「さてと鑑賞会、鑑賞会、と」
俺はワクワクしながら、まずエロ漫画を見始める。
内容は特に気にしない。
とにかくエロいシーンが見れれば、満足だった。
「んっ?」
エロ漫画を半分ほど読み進めた時だった。
足音が聞こえる。
狸や猪とは違う。
明らかに人の足音だ。
この土地の所有者かな?
俺は冷静に音を立てず、草木の茂みに身を隠す。
現れたのはやっぱり人だった。
でも、絶対のこの土地の所有者じゃない。
同じ中学校の体操服を着ている。
しかも女子だ。
なんでこんなところにいるんだ。
…………えっ!?
俺は声が出そうになったので、口を抑えた。
その女子を俺は知っていた。
というより、うちの学校で彼女を知らない人はいない。
だって……
「生徒会長の栗林さん?」
俺は自分にだけ聞こえる声量で呟く。
スポーツではソフトボール部のエース、学業では常に学年トップをキープ。
そして、生徒会長。
性格は年上かと思えるほど、落ち着いていて、大人びている。
非の打ちどころがない完璧超人だ。
そんな彼女がなんでこんなところにいるんだ?
先ほどから異常なまでに周囲を警戒している。
未だに栗林さんがここにいる理由が分からない。
どれだけ時間が経っただろう。
栗林さんは深呼吸をして、覚悟を決めたようだった。
そして、俺の
――って、ちょっと!?
もしかして、栗林さんは俺がここにエロ本を集めていたのを知っていたのか?
それで、このことを先生に報告して、俺を社会的に抹殺するつもりか!?
……いや、冷静になれ。
この場所に俺がエロ本を集めているのは誰も知らないはずだ。
もしも学校に報告されても、俺が犯人だってバレない。
でも、その場合、ここへ再び来るのは危険だ。
それにエロ本は撤去されるかもしれない。
エロ本は諦めるか、別の場所へ移すしかないか。
俺が今後のことを考えていると、栗林さんがエロ本の入ったトランクの中を漁り出した。
「えっ、まさか……」
栗林さんはエロ本の一冊を手に取って、読み始めたのだ。
初めは中身を確認しているだけだと思った。
でも、違う。
明らかに熟読していた。
「…………」
俺は目が離せなくなった。
栗林さんはエロ本を読んでいるだけで、他のことは何もしていない。
エロ漫画に描かれているような何もしていない。
本当にただエロ本を読んでいるだけだった。
でも、才色兼備、品行方正の栗林さんがエロを読んでいる、というだけで俺はいけないモノを見ている気がした。
栗林さんのような女子がエロ本を読むなんて想像できなかった。
俺はどんなエロ本を見た時よりも興奮していたと思う。
それに体がぞわぞわ、って……んっ?
このぞわぞわは物理的なものだった。
見ると足に蛇が巻き付いている。
「うわっ!?」
俺はびっくりして、飛びあがった。
幸い、蛇もびっくりしたらしく、逃げて行った。
ホッとしたのも束の間だった。
「…………」
「…………」
エロ本を読んでいた栗林さんと草木から飛び出した俺の視線が合う。
「安藤君……?」
栗林さんの顔からサーッと血の気が無くなる。
「ごめん!」と言い残して、俺はその場から逃げようとする。
しかし、逃げられなかった。
ソフトボールのエースの身体能力は凄い。
あっという間に距離を詰められて、手首を掴まれたと思ったら、そのまま引っ張られて、押し倒される。
「えっと、その……覗くつもりは無かったんだよ。人が来たから、咄嗟に隠れて……」
怒られると思った。
変態とか、最低とか、言われると思った。
でも、現実は違った。
「違うの!」
「え?」
「これは勉強!」
「んっ?」
「そう、保健体育の勉強なの!」
「…………はい」
栗林さんは真っ赤な顔で苦しい言い訳をする。
普段の大人びている栗林さんはそこにいなかった。
「あ、あの、その言い訳は無理があると思うよ?」
「~~~~~~」
俺が宣告すると栗林さんの顔はさらに赤くなった。
ヤバイ、今度こそ、本当に怒られる。
「分かった。このことをバラされたくなかったら、あのエロ本みたいなことをすれば、いいんだね?」
「えっ?」
栗林さんは上着を脱ぎ始めた。
「ちょっと、いきなりどうしたの!?」
「こういうことが望みなんでしょ! エロ本みたいなことをしたいんでしょ! 好きにすれば、いいじゃない! エロ本みたいに!」
「落ち着いて! 俺がいつそんな要求をしたんだよ!?」
栗林さんは別人かと思えるほど取り乱していた。
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