第3話 手続きをします
警察から発行してもらったモンスター被害証明書のお陰でスムーズに休みが取れた。
この被害証明書があるにも関わらず検査や手続きのための休暇取得を断った企業には厳しい罰則が加えられる。
さらにネットにでも広がれば世間から叩かれてしまうので、どんなブラック企業でも休みを与えざるをえない魔法カードとなっている。
午前中に検査を済ませ(もちろん健康体だった)モンスターと入れるカフェにて昼食。
我らがテフテフは初のハンバーガーを前に興奮した様子。
口回りをソースでべったりにしつつも夢中で頬張る姿はまさに天使。
「きゅっぴ!!!」と満足の言葉を頂いた。
休日は基本昼食を取らない一果もその飯テロな光景に思わず軽食を注文した程だ。
そして午後。
テフテフを頭上に乗せ到着したのは区役所。
天井から吊られた案内板を見つつ目的の受付へと向かい、券をとって順番を待つ。
「5番の方、こちらへどうぞ」
若い男性職員が居る窓口へと向かう。
「今日はどうされましたか?」
「テイマーライセンスの再発行とこの子の育成登録をしたくて」
「再発行というと、以前にテイマーとして活動されていたといことですか?」
「はい、小学生の頃に。その後にちゃんと更新してなかったので、失効していると思われるので」
「わかりました。ではマイナンバーカードをお預かりします。再発行の手数料として3900円かかりますので、あらかじめご了承ください」
「わかりました。準備しておきます」
「ええと、育成登録の方ですが……」
「はい。この子です」
「ワームは人間に危害を加えることはほぼなく……弱すぎて危害を加えられないと言った方が正しいですかね。とにかく無害なのでわざわざ登録することもないと思いますが……」
「形式って大事だと思いますので登録をお願いします」
「わかりました。ではこの子の登録料……ええとワームは……はい。29000円ですね。合わせて頂くことになります」
「わかりました」
言うと職員男性は一度マイナンバーを持って奥の方へと引っ込んだ。
おそらく再発行のためのなんらかの手続きがあるのだろう。
一果は「公務員って適当なイメージだったけど今の人はしっかりしてたな~」と思いつつサイフからお金を準備していた。
その時。
「ええええええええええええええええええ!?」
受付の奥からとんでもない大きな声。何やら驚いているようだ。
「きゅっ!?」
満腹でうとうとしていた頭上のテフテフも「ぎょ!?」とした様子で身体をびくつかせる。
「なんだろうね~」と言いつつてテフテフを宥める。
少し奥を覗いてみると、どうやら大声を出したのはさっきの男性職員だったらしく、申し訳なさそうに周囲の人に頭を下げている。
そして慌てて印刷した書類をかき集めると、慌てた様子でこちらにやってきた。
「ええええああああのえええと……あの」
「落ち着いてください」
先ほどまでの丁寧な対応はどこへやら。
「失礼しました。ええと
「はい」
「同姓同名の別人ということは?」
「えっと、何か?」
「し、失礼しました。あまりにも信じられないことが起こったものでつい……」
職員さんは資料を差し出してきた。そして、小声になる。
「て、テイマーランク【プラチナ】。育成登録モンスター数【150】……マジっすかこれ!?」
テイマーランクとはダンジョンで討伐駆除したモンスターの数、育成したモンスターの数によって上がっていく級のようなものだ。
テイマーランクでブロンズ並。シルバーで上級者。ゴールドでプロ級と言われている。
そしてそのさらに上に位置するのが【プラチナ】ランクとなっている。
「マジです」
「こ、これが本当だとすると……結城さんは今のチャンピオンより凄いってことになっちゃいますけど……?」
「あはは。これ十年以上前のデータですから。今より基準が甘かったんじゃないですか?」
めんどくさくなってきたのでごまかす一果。
しばらく「そうだろうか……」唸っていた職員だったがようやく自分の中で整理がついたようで、先ほどまでの笑顔を取り戻した。
良かった。「早く手続き進めてくれー」と思う一果。
「わかりました。ではサインを頂きたく」
「ええと……この欄ですね?」
「いえ、そちらの書類ではなく……」
言うと男性職員はマジックペンとサイン色紙を取り出した。
「こちらにサインをお願いします。今日の日付と『しょうちゃんへ♡』という言葉もお願いします」
「なんでだよ」
結局諸々の手続きは閉館まで続いた。
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