レーニンの異世界革命記

日本人民共和国

第1話 レーニン、転生する

「うっ……う~ん」


ある男が、何も無い真っ白な空間で起きた。


「ここは……私の部屋ではない?おい!守衛兵!居るのか?」


守衛兵を呼んでも来ず、彼は敵対組織に拉致されたと思った。が、ある人物の登場により彼の頭の中からそんな考えは吹っ飛んでいった。


「やあ、ウラジミール・イリイチ・レーニン。私はラキエル、神の命によって貴方を転生させることにした」

「……」


彼は(こいつはなにを言っているんだ)という怪訝な顔でラキエルを見ていた。そして、


「何を言っている?誰かは知らないが正教会の信仰が強すぎて、遂に頭がおかしくなってしまったのか?しかも転生?人は死んだら無に帰るものなんだがな。そんなことよりここは何処だ?私にはソ連の運営と世界革命という大切な仕事があるんだ。君の神様ごっこに付き合っている暇は無い」


と吐き捨てるようにに言い、モスクワに帰ろうと歩き始めた。しかし、出口のようなものは見つからず、延々と地面が続いているように感じ引き返してきた。


「出口は何処にある?」


と、ラキエルに尋ねた。すると


「此処に出口などありません。何故なら貴方は既に亡くなっているからです。生きている以上は死に出口など無いと、無神論者でも分かると思いますが?」


レーニンは帰ってきた答えに唖然とした。なぜなら現世での最後の記憶が、自分の部屋のベッドで苦しむ姿だからだ。そして、意識が遠のいたあと、ここで目が覚めた。そのことを思い出した。


「私は……死んだのか……」

「はい、そうです」


夢見ていた世界革命、平等な世界が実現出来ないという事実に、レーニンは膝から崩れ落ちた。


「そうか、ならその後はどうなった?100歩譲って君が神と言うならば、未来くらい分かるだろう?」

「貴方が死んでからは、側近のトロツキーとスターリンが権力闘争をして、結果的にスターリンが最高指導者になりました。そして、一国社会主義を進めました。あと私は神ではなく天使です」

「よりにもよってスターリンか!はぁ、私のソビエト連邦が心配になってくる……」


天使ラキエルの指摘も無視し、未練に浸っていたレーニンはそれを振り落とし、最初に言っていた転生について質問した。


「で、転生とはどういうことだ?」

「それは貴方が居た世界より幾分か文明は遅れていますが、魔法と呼ばれるものが広く使われている世界で新しく生きることです。異世界転生とも言います」

「新しく生きる。か」


レーニンは一呼吸置いたあと、ラキエルにこう言った。


「もはや私の望んだソビエト連邦ではないなら、戻る気は無い。その異世界とやらに行って、革命をやり直してやる」


そう言って、レーニンの異世界革命が幕を上げた。






















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