第6話

 もしもし?とかわいい声がする。

 電話の音にはビックリした。

 素直に助けてほしいという。藤麗華はなにから?と問う。

 少年は答える。

 夜から、と。

 じゃあ、夜遊びしちゃう?いたずらっ子な声。本当にするわけじゃ無い。夜遊びなんて想像もつかない。深夜のカラオケくらいしか。

 中学校を卒業して、すこし引きこもって、できそうな仕事というよりやれ、という仕事場に行かされた。面接は真面目に受けた。受かっても就職したくなかった。それでも正社員として毎日汗だくになりながらシートを張り、先輩にこづかれ、社長とは話したことがない。ローラー片手に。

 少年は、藤麗華だけを考えて生きる。

 だって、セフレの意味が気になるから。

 聞いたことがなかった。他にもいろんな言葉を知らない。バズる、という言葉を教えてくれたのもせふれだった。どういう意味か、ネットで調べる時間がない。

 いままでは。

 せふれとの通話は、二十秒で終わってしまいそうな気がする。寝るまでつうわしてあげよっか?寝落ち通話。

 せふれからまた、あたらしい言葉を使われる。

 電話もったいなくない?、LINEはタダだよ、そっか。

 そんな会話だけで目がトロンとしてきた。

 眠れそうだ。

 少年は言った。

「夜更かしは体に毒だ」

 せふれ、藤麗華が言う。

「君がいつも飲んでる薬は毒じゃないの?」

 中毒にされて、搾り取られてない?

 うまれてはじめて、藤麗華から責められたような、否定されたような、そう。否定。

「どういうこと?」

「薬漬け、にされてる、ってこと。あと、セフレの意味はわかった?調べ物してると、案外時間が過ぎるものだよ。寝るのも逃してしまうけど。そして、翌朝寝過ごす。寝過ごすってさ、悪い意味に聞こえないよね。遅刻を連想させてマイナスイメージだけど、じゃあね、また、電話していいよ、せふれっ」

 僕の名前は瀬田フレア。

 少年は突然名乗る。周りにもアクアとかキララとかいるのだから、とうぜんこの言葉も知らなかった。

キラキラネーム。

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