とある少年 〜困ったあだ名とキラキラネーム〜

明鏡止水

第1話

 物音。

 扉の開く音。階段を駆け降りる音などはしない。代わりに、少し経ってから。

 車のエンジンのかかる音がする。

 少年はほっとした。

 こわがりである。いとしい、いとしい、読書好きの怖がり。

 冷蔵庫のとつぜんの稼働音の停止にはほっとする。風呂場の水滴の垂れる音も。

 こうして明るい部屋の下、目だけは良いので裸眼で本の文字を追えること。

 一度垢抜けたくて伊達メガネを買ったことがあるが、かえって、ほんとうに目の悪い少年に見えるだけのインテリ眼鏡になってしまった。

 少年は、孤独ではなかった。

 セフレがいるからだ。毎日おはようのLINEがメッセージとスタンプと共に送られてくる。

 それでも、

 夜は、ひとりは怖かった。

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