麒麟さんって誰ですか?
「チーズを食べればみんな幸せ! 幸せを届ける『カティの愛あるチーズ工房』はこちらですよおっ!」
今日も元気いっぱいのカティの呼び込みの声が世界にこだまする。おいしさと幸せを人々に届ける『カティの愛あるチーズ工房』は今日も大盛況。
カティが愛と魂を込めて作りあげたチーズの数々。グリフォンが焼いた何種類ものパン。フェニックスとリヴァイアサンが育てた野菜と果物、そして、フェンリルが狩ってきた獲物の肉を使って作ったシチューにサラダにパイ……。
おいしさと栄養あふれる商品の数々。そこに加え、デイリーメイド姿のカティ。愛らしい幼女のフェニックス。いい感じに力の抜けた印象のセクシー美女リヴァイアサン。大胆な露出の南洋系ギャル、グリフォン。子供たちに大人気、もふもふの王者フェンリル、と、それぞれに魅力あふれる店員たちの存在とでどこに行っても大人気。
開店すればたちまちお客が集まり、大賑わい。会計の前には長蛇の列。チーズやパンを腕いっぱいに抱え、食べるときがまちきれないとばかりにそわそわした様子で自分の番をまっている。
「リコッタとモッツァレラ、それに、バゲットをちょうだい」
「はい、おめでとうございます」
カティは笑顔で注文を受けると手早く商品を用意し、紙袋に包む。客に手渡し、会計をすませる。幸せの予感にホクホク顔で帰って行く客を、とびきりの笑顔を浮かべながら手を振って送り出す。
カティは決して『ありがとうございます』とは言わない。必ず、
『おめでとうございます』
と言う。
それは、愛するチーズ姉妹たちの乳から作りあげたチーズに対する限りない自信の現れ。他では決して味わえないおいしさと幸せに出会えた幸運を客のために喜ぶのだ。
送ってもおくっても新しいお客はひっきりなしにやってくる。店の前にはいつだって長蛇の列、列、列。カティはその全員にもれなくとびきりの笑顔を贈る。客と店員。双方が幸せな満ち足りた時間。それが突然、かわった。
ざわ、と、客たちがざわめいた。その視線の先。そこに『ソレ』はいた。
虹色に輝く雲を身にまとい、虹色の光を放つ聖なる獣。人が見るにはあまりにも高貴に過ぎるその姿。なにも言われずとも自ら
「……
フェンリルが呟いた。
太陽を呑む魔物、陸の覇者、神獣の女王。神霊たちの最高位に位置する四神の一柱たる魔狼フェンリル。そのフェンリルが
「
フェンリルの声にカティは呟いた。
「フェンリル! リヴァイアサン! フェニックス! 三界の覇者ともあろうものたちがいったい、なにをしている?」
静かだけど深みのある
「こ、こらあっ! あたしを無視するな! あたしだってれっきとした神霊の一柱なんだぞっ!」
存在を無視されたグリフォンが怒りの声を張りあげる。しかし、
「フェンリルよ。自分の使命を忘れたか。太陽を呑むことで世界を滅ぼし、新たな世界を生み出す。それが、そなたが神より与えられし役割。そなたが目覚めたのはいままさにその役割を果たし、世界を新たにするため。それは、神のご意志。そのことを忘れたのか」
「忘れてはおらぬ」
フェンリルは
「だが、
「のじゃ」
と、フェニックスも言った。
「世界を守る力として、わらわは生みだされた。そして、これまでのわらわとフェンリルの戦いは二回、わらわの方が勝ち越しておるのじゃ。そのことはわらわの日記にきちんと記されておるのじゃ。神のご意志が世界を滅ぼし、新しくするだけならそんな結果になるはずがないのじゃじゃ」
「そして、
「嘆かわしい」
「魔狼フェンリルともあろうものが人間ごときに餌付けされたか。そこいらの犬っころのごとくに。四神の誇りはどこへやった?」
「こらあっ! カティ姉ちゃんを『ごとき』なんて言うな! カティ姉ちゃんは優しくて、愛情深くて、ボッチだったあたしを救ってくれた人なんだぞ! あんたは、あたしが鳥からも、獣からも、
グリフォンの怒りの声が響く。
「ねえ、きーちゃん」
いまにも飛びかかりそうなグリフォンを片手で押さえながら、海の覇者たるリヴァイアサンが言った。
「嘆かわしいかどうかを決めるのは、カティのチーズを食べてからにしない? リヴァさんたちがカティに付き合うことにした理由も知らずに決めつけるのはフェアじゃないと思うなあ」
「そうです!」
と、カティ。勢い込んで
「あなたが何者で、なんの用でやってきたのかは知りません。でも、『カティの愛あるチーズ工房』の前に現れたならお客さまです。おいしさと幸せをお届けする自慢のチーズをぜひ、味わってください」
カティはそう言って一抱えもある大きなチーズの塊を差し出す。
「ますます嘆かわしい。霊的位階の頂点に立つ四神ともあろうものたちが、よりによって物質界の食物などに
その一言を残し、
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