第3話 信長、友人になるⅠ
高校始まったら始まったでだるいな。
しかし、昨日のあいつホントきもかったな。前髪長すぎて、口元しか見えなかったし・・。どこの引きこもりの代表だってんだ。
そんな俺、久我信長は少しいらだっていた。昨日、たまたま本屋に寄ったら気持ち悪い生物にぶつかってしまったからだ。そんな俺は、頬をつきながら廊下側から二番目の一番後ろの席に座っていた。
恒例の自己紹介ってなんともめんどくさいよな。昨日も思ったが俺の隣の奴はなぜまだ来ていないのだろうか。そうこうするうちに隣の席のやつに回ってしまった。それと同時に前のドアがばたんと開いた。そこには、見覚えのある風貌の奴が立っていた。
おいおい、なんかの冗談だろ。なんで、あいつがいるんだよ。
「はぁはぁ・・・。申し訳ないです、先生」
寝坊して急いでいたのかフルマラソンを走ってきたのかと思えるぐらい息を切らしていた。
「ちょうどあなたの番です。自己紹介をしてください」
「えっと、臼井景虎です。東邦南中学校出身です。好きなものはゲームです。よろしくお願いします」
深々と頭を下げた、キモオタ野郎は、せっせと先生の指示のもと案の定俺の隣に座ったのである。それから、午前までだった学校は軽く流す程度で終わった。
まぁ、なかなか友達は、できたな。
「あの・・・・。すみません」
俺が帰ろうと、バックを手に取ろうとした時、隣で本を読んでいた、キモオタがこっちに話しかけてきた。
はぁ、死にたい。
「なんだ、俺になんか用か」
「はい。ぼくは、あなたに言いたいことがあるので、一緒に帰りませんか」
こいつは、何を言ってるんだ。急にどうしたんだ。いきなり俺を帰りに誘って何するつもりだ。まさか、こいつ昨日のことにキレてるのか。オタクほどキレると殺したりするとか都市伝説じゃないのか。いや、だがしかしここで断って変に粘着されても困る。仕方ないか・・・。
「ああ、いいぜ。望むところだ」
そうして俺は、覚悟を決めてこのキモオタもとい臼井景虎と歩いているわけである。俺らの間には少し気まずい雰囲気が漂っていた。
「おい、言いたいことあるんだろ。立ち話もあれだから、ファミレスにでも行くか」
俺は、どうにかこんな気まずいことから逃げ出すために話しやすい環境を作ろうとした。
だが、このキモオタは、首を縦に振っているだけだった。
そんなこんなで、俺らは、昼間を少し過ぎたファミレスの端の席にいるんだが。
「えっと・・。久我君・・・・」
臼井景虎は、その重い口を開いた。
とうとうこの時が来たか。覚悟を決めないとな。
俺は、神妙な面持ちで臼井景虎を見た。
「なんだ」
俺は、久々に生唾を飲んだ気がする。それぐらいここには緊張が走っていた。
「僕と、友達からでいいので、付き合ってください」
「はぁっ・・・。お前何言ってんだ。お前そっち系か」
「・・・・そっちとはどういうことでしょう」
臼井景虎は、首を横に傾け分からない様子であった。
「いや、だから男が好きなのか。それなら、俺はそっち方面じゃねぇからお断りだ」
「久我君。僕は、ちゃんと女の子を好きになりますよ。何言ってるんですか」
「はぁっ。そうか。それならひとまず安心した」
おい、じゃあその言葉どういうことだ。
自分の中で、ツッコんだが、口にすることはなかった。なぜか、出来上がっていたツッコミとボケ(天然)の構図から脱したかったからだ。
「なぜ、そんな勘違いを起こしたのでしょう。この本通りに友達申請をしたのですが・・・」
臼井景虎は、また不思議そうにしながら、おもむろにカバンから本を取り出してパラパラとページをめくっていた。
おい、それってラノベか。こいつまさかそれ参考にしてんのか。
「おいっ、お前それ貸せ」
「えっ、ああいいですけど」
俺は、ペラペラとめくると、今さっき聞いたことと同じようなことが書かれている文章を見つけた。
「おい、お前これを見て言ったのか」
「ええ、そうですけど。何か間違ってるでしょうか」
「大間違いだよ。甲子園でサヨナラホームランかと思ってみんな大喜びしてたら、センターフライぐらいの大間違いだぞ」
「そんなですか。えっ、でもそれのどこが間違ってるのでしょうか」
「いや、これは主人公がたまたま告白現場を見たシーンだろ。しかも、異性でやってんじゃねぇか」
「ああ、告白シーンですか。友達になってくださいって書いてるので、勘違いしてしまいました」
「はぁ、そうかよ」
俺は、こいつに何を言っても駄目だと思い、頬杖を突きながら窓の外を眺めた。
「久我君。どうやったら君と友達になれるのでしょうか」
「そんな言われてもな・・・。友達ってそんなゲームみたいに申請してできるもんじゃねぇんだよ」
「じゃあ、どうすれば・・・・・」
「いや、だからさ。しゃべったりして、気が合うやつは勝手になるもんだろ」
「なんですか。それ。じゃあ、僕と久我君もこうして話しているのですから、友達に・・・。」
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