R.B.ブッコローとトリのしりとり対決

桃月兎

第1話来訪

 平日の午後三時すぎの事。  

 KADOKAWAデジタル戦略推進局に、ブッコローが一人(一匹?)でやって来た。

「ドーモドーモ、毎度お馴染みのブッコローです。近くを通りかかったもんで、と言いますか、暇なんで遊びに来ました。もしくは道場破りですけど、タノモー!」

 鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をする社員A(仮名)とトリ。


「まぁまぁイイじゃないっすか、冗談ですよ。あんまり面白くは無いッスけど。それよりも俺とトリさんでしりとりでもして、親交を深めましょうよ。居酒屋で焼き鳥食うわけにもいかないんだし。しりとりの三本勝負で罰ゲームは無し。ただし、こっちから挑んだ以上そちらで何らかの追加ルールを決めて下さいよ」


 社員Aは少し悩んでから発言をする。

「では出版業界に関係する言葉縛りでどうですか?」

「出版業界に関係する言葉縛りしりとり、イイッスネ。言葉の判定はAさんに任せます。トリさん先攻でどうぞ」

 ブッコローが手羽先で、トリに促した。



「角川書店」(かどかわしょてん)

 トリの嘴から衝撃の第一声が放たれた。しりとりなので『ん』で終わっているので負けである。


「…………」

「…………」

「…………」

 暫くは三者共無言であったが、一早く社員Aが正気に戻り、口を開いた。

「『ん』で終わったので一本目はトリの負けです。二本目はブッコローさんの先攻でお願い致します」


「ああ、ソッスネ。あーどうしようかなー。うーんと、うん、決めた。それじゃあ二本目始めます。有隣堂書店(ゆうりんどうしょてん)。ヤベェ、『ん』が付いちゃった。二本目は俺の負けッスネ」

 ブッコローは手羽先で頭部をかいている。


 『有隣堂』をワザワザ、『有隣堂書店』と言い換えているので、ブッコローが意図的に負けたのは、誰の目にも明白であった。

「そうですね、二本目はブッコローさんの負けと致します。これで一対一のイーブンです。最終三本目はトリの先攻で始めます」


「本」(ほん)

 又しても、トリの嘴から衝撃の言葉が放出された。しりとりなので『ん』で終わっているので負けである。


「…………」

「…………」

「…………」

 三者共無言であったが、今回はブッコローが最初に発声した。

「イヤー、勝ちを譲ってくれたんですよね。もう参った参った、その懐の深さに完敗ですよ。正に完敗に乾杯、ナンチャッテ。トリさん、今度トウモロコシでも食いに行きましょうよ、新鮮なトウモロコシを出すいい店知ってるんで。それじゃあ失礼しますよ」

ブッコローは部屋から出ていった。


「ねぇトリ、どうして、二回共『ん』で終わる言葉を言ったの?」

 社員Aが素朴な疑問を口にした。


 トリは首を傾げながら、頭上にはハテナマークが浮かんでいる。

「しりとりってなあに?」

 三度目の、トリの嘴から衝撃の言葉が飛び出した。







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R.B.ブッコローとトリのしりとり対決 桃月兎 @momotukiusagi

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