第101話イヴァニア王国(隣国)の重鎮side

「将軍、どうやらセニア王国の内乱は随分酷いようだな」


「はい、なんでも王都でのクーデターが尾を引いているようです」


「あのクーデターも酷い有り様だと聞いた。結果だけを聞くと、当然の処置だろう。ここで甘い顔をすれば第二のクーデターを起こす者達が現れないとも限らないからな」


「はい。問題はその後です」


 将軍の顔色は悪い。

 もっとも顔色がいい者などこの場には誰もいないがな。


「民衆の暴動の件か?」


「はい……」


「王族のクーデターの後は王都民の暴動とはな。あの国は本当に我々を飽きさせませんな。次は何が起こるのか見当もつかない!ははははっ」


 外務大臣の嗤いが室内に響く。


「笑い事ではありませんぞ!!」


「これは失礼」


 大臣に叱責され、戯けながら謝罪する外務大臣だがその目は冷めている。今回の隣国の騒動を冷ややかに見ている証拠だろう。まぁ、私もそうだしな。


「とにかく今は早急に手を打つべきでしょう」


 内務大臣の言葉を皮切りに各省庁の責任者達はそれぞれの意見を出し始める。

 一人はこれを機にセリア王国を攻め滅ぼし、我が国の領土拡大を目指すべしと言う意見を出した。

 それに反対する者たちも当然いる。元々王家に反発している地方貴族は自分達を新しい主とは認めないだろうと。

 

「ならば、属国とすればいい!」


「簡単に言ってくれます。そもそも、今、反王家が連合を組んで戦っている最中ではないですか!それに横やりを入れれば内戦はさらに悪化するのは明白でしょう!火種が我が国に持ち込まれないとも限らないのですぞ!!」


 内務大臣の意見に同調する者は多い。

 王族のクーデター、王都民の暴動、それらが我が国に起こらないとも限らない。内務大臣の危惧も分かる。これらの事に我が国の民が影響を受けるのを恐れている。

 

 結局、どの派閥にも賛成する者と反対する者がいて話がまとまる事はなかった。


 


「隣国の今の状態はどうなんだ?王家は旗色が悪いと聞くが実際のところ戦況はどんな具合なのだ?」

 

「あまり良い状況とは言えませぬな。というより現状では王家は負け越しです」


 私の質問に答えたのは軍務副大臣である。

 彼の言葉を受け将軍が大きくため息をついている。


「数で勝る正規軍が反乱軍に押されるとはな。信じられん話だ」


 大臣の一人は苦笑しながら言う。

 その意見には私も大いに賛成だ。

 セリア王国で内乱が勃発した時に「反乱軍はすぐ鎮圧されるだろう」と思ったからな。それくらいに正規軍と反乱軍との戦力差は大きかった。加えて、反乱軍は領軍の寄せ集め集団だ。言い方は悪いが『烏合の衆』だ。


 それが今や反乱軍の戦力の方が遥かに大きいらしい。正直なところ想像できない。

 しかも、今現在進行形で勝ち続けているというではないか。

 そんな馬鹿げた話は聞いたことがない。普通ならありえない事態だと言える。しかし、実際に起こってしまっているのだ。


 よほど指揮官と運に恵まれてでも居ない限り不可能だと思うのだが……。


 



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