第100話とある連合軍人side
「ふざっけんなって話ですよ!」
部下の一人が激高していた。
気持ちは分かるけど落ち着けってば。
「よっぽど、あのクーデターが尾を引いているんだろう。そうとう酷かったみたいだからな」
同僚の一人もやれやれといった感じだ。
「確か、クーデター起こした大公家の連中が滅茶苦茶暴れ回ったって話だろ?」
「ああ、見境なく敵認定した者達を殺しまくったらしい」
「あ!それは俺も知ってます!!そのせいで大公家は皆殺しにされたって話ですから。そういえば大公家で運よく逃げ延びた人達がいるって噂ですが……本当でしょうか?」
「はっ!? 生き残りがいたのか!!?」
おいおい、どんな強運だよ。
いや、この場合悪運というべきか?
「それは俺も聞いた。ただの噂じゃない。本当の事だ。元々、こっちと繋がっていたって話だ。クーデターのどさくさに紛れて隣国に亡命したらしい」
別の意味ですげぇ奴もいたもんだ。
同僚の話じゃ、なんでも家族そろって亡命に成功したっていうじゃねぇか。なんじゃそりゃ?めっちゃ運が良い。しかも事前に金目の物を密かに運び出していたって話だ。亡命貴族として隣国でひっそりと暮らしていくんだろうな。まったく。他の親族は皆殺しにされてんのに。いや、その家族は賢かったんだな。あるいは見切りが早かったのか。どちらにしても二度とこの国には戻ってこないだろう。
それにしても王族や貴族っていうのも因果な稼業だ。
普段はふんぞり返っていて偉ぶってる連中も一瞬で族滅だ。自分一人だけじゃない。親類縁者まで殺されている。一族を裏切って生き延びたところでそれが一生ついてまわる。亡命した伯爵家もそう考えるとかなり厳しい立場にいるな。
「それよりも……アレって本当なんでしょうか?」
「アレ?」
「はい。大公家が決起した声明発表……」
「どうだろうな。ああいった噂は前からチラホラあったしな」
はっきり言って真偽のほどは分からない。
大公家が流した映像。
それにはクーデターを起こした理由が公開されていた。クーデター直後に流された映像だ。恐らく事前に撮っていたものを流したんだろう。
天からの映像だ、と王都民は騒然となったそうだ。
ま、そう思っても仕方ない部分もある。
どんな道具を使ったのかは知らないが映像を空高くに投影しているんだからな。しかもあんな巨大な物体を。それだけでも驚くには十分すぎるほどの出来事だ。
しかも内容がこれまたショッキングなものだった。
今の王様が亡くなった国王の実子じゃないなんて。
そりゃあ、王様の怒りを買うわなぁ〜と思う内容だった。亡き王妃に瓜二つだっていう王様は父親の面影は一切ない。顔付きが違うだけじゃなく、色合いだって父と子とは言えないレベルだった。むしろ血のつながりがないと言われた方がしっくりとくる程に似ていない。ただし、その話は以前から囁かれてはいたがな。でもな、実際に映像で違いを見せつけられたら「ああ、やっぱり」ってなるのは仕方のないことだ。しかもだ。あのクーデターを起こしたのが王家の分家である大公家だから、もう笑うしかないって感じだった。
王様も厳しい立場だ。
この戦いに敗れたらただではすまない事を自覚してるんだろうな。
貴族だけじゃなく、民衆にまで血筋を疑われてる。
自分が国王であり続けるには勝たなきゃいけない。
それは俺達も一緒だ。
勝たないと生き残れない。
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