第97話クーデター3
連合軍に加わりたい、とは言えないしできない事は大公家の人間なら理解していただろう。情報や兵力などたかが知れている。功績をあげる必要があると思ったに違いない。そしてそれは間違ってない。
「それにしても間の悪い方々ですわ」
ブリジットの言葉に同意する。
大公家はチャンスをものにできなかっただけでなく、とことんツイてなかった。クーデターを起こした時間に増援部隊が到着した。偶然が嫌な方向に重なった。本来増援部隊の到着は三日後。それが急遽予定が変わり早まった事で、クーデターは失敗に終わった。これさえなければクーデターが成功していた可能性だってあったのだ。運が悪いというか、間が悪いというか、ついてないというべきか。
「ある意味で歴史に残る運の悪さだよね」
僕の言葉に二人はうなずいた。
大公家は一族総出で戦った。特に亡き大公の娘婿の連中は死に物狂いで戦ったらしい。大公家あっての権勢で今がある連中ばかりだ。大公家という柱を失えば全員が没落するしかないと理解していた。増援部隊を含めた正規軍と最後まで、それこそ一族が全滅するまで戦ったのにはそう言ったどうにもならない背景があったからだ。結果、生存者無し。大公家は滅亡した。
「クーデターだけで話が終わっていたら此処まで拗れなかったかもしれないわ」
義母の話は続き、クーデターに関わっていないまでも大公家と親しかった貴族達は軒並み処罰された。中には爵位を奪われ領地も取り上げられた者もおり、連座した者の中には家族もろとも殺された者もいるそうだ。この国でここまで貴族の血が流れる事態に発展するとは誰も想像しなかったに違いない。
それだけクーデターはインパクトのある出来事だったのだ。
「エンリケ王子は即位したとは言え、宣言しただけです。彼の権力基盤は私達が思っている以上に弱い。正規軍が負け続きということも拍車をかけているのでしょう。そのうえにクーデターを起こしたのが王族である大公家です。首謀者が侯爵であったとしてもエンリケ王子にとっては同じこと。自分を裏切りその地位を揺さ振ろうとする者達を許す事はできなかったのでしょう。感情的にも大公派の貴族を生かしてはおけなかったのでしょうね」
「クーデターの片棒を担いでなかったとしても大公家に近しいと判断された人間は全て粛清対象ですか」
「そうなるわね。エンリケ王子自身が疑心暗鬼に陥っているのもあるでしょうけど……」
義母はこの粛清はまだ続く可能性があると付け加えた。
王家は内側から瓦解しようとしていた。
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