第24話 紅茶は至高

「わぁぁああああああ!!」

「待て待てぇ〜っ! 捕まえ──へぶしっ!」

「ね、姉さん! 大丈夫?」

「だ、大丈夫だ! ちょっとコケただけだ」

「もう、気を付けてよね」


「ベルファスト、お茶を入れてくれるか?」

「はい」

 俺のそばにいるベルファストは紅茶が無くなったティーカップにティーポットで紅茶をゆっくりと注ぐ。その紅茶はとても透き通った色で綺麗な緑茶のような色だった。

「三人とも楽しそうだな」

 俺は屋敷の庭にあるガゼボでミオンがルビーとエメラ二人と走り回っている様子を見ながらティーカップに口を付ける。

「はい、仰る通りでございます」

「──う〜ん、良い香りだ」

 紅茶の香りが俺の鼻孔をくすぐる。

「西方の地域で採れた茶葉のオペラと商人から伺っております」

 俺はもう一口だけ紅茶を口に含む。

香りは甘いにも関わらず、口当たりはすっきりとした味わいだ。また、香りと飲んだ時の口当たりにもギャップがあった。

「美味いな、だが、ベルファストが淹れる紅茶はもっと美味い」

「身に余るお言葉、恐悦至極にございます。ルイス様」

ベルファストは両手をお腹あたりに重ねて頭を下げる。

 俺は三段のケーキスタンド(ティースタンド)の上段に載せられているマカロンに手を伸ばし、一つ摘んで口の中に放り込む。

 うーん! 甘いものとの相性も抜群じゃないかー! 甘いもの最ッ高ーッ!

「お楽しみの中、申し訳御座いません。ルイス様」

 一人の青髪ポニーテールのメイドが俺の方に近づいてきた。

 誰だ一体、俺のティータイムを邪魔する奴は!

りん、どうしたのですか?」

【凛】は俺が注文したアンドロイドメイドの一人だ。ベルファスト以外はみな凛のように、量産型のアンドロイドだ。

「些細なことですが、念の為ルイス様のお耳に入れておこうかと」

「で、その要件は何だ?」

「実は──ゴニョゴニョゴニョ」

 凛はしゃがんで俺に耳打ちをする。

「それは本当か?」

「はい、間違いないかと」

「そうか……分かった。それは後で、もことリナの二人を連れて行くとして──凛、少し目を瞑れ」

「分かりました」

「ベルファスト、を」

でございますね」

 俺はベルファストからを受け取り、凛の頭にそれを付けた。

「凛、目を開けろ」

「はい」

 凛は目を開けて、違和感を感じる頭に手を伸ばした。

「これは──」

 凛は自分の頭に付けられた“フユザクラ”の髪飾りに触れた。

「髪飾り……ですか……」

「あぁ、そうだ」

「ルイス様、なぜ私なんかに……」

「いつも頑張っている従者には褒美をやらないとなっ!」

 俺は凛に向けてニカッと笑った。

「良かったですね、凛」

「はい、ベルファスト様。ルイス様……ありがとう御座います。この髪飾りは大事に致します」

 ベルファストは隠しているつもりだろうが、俺はベルファストが凛のことを少し羨ましそうにして見ているのを見逃さなかった。

 王都に行ったときに何か買ってやるか。

「髪飾りは一応、他のメイドにも配るが一人一人違うから安心してくれ」

 俺は席を立ち、ベルファストと凛に伝える。

「俺は今からもことリナを連れて王都に向かう。その間、ルビーとエメラの特訓とミオンを頼んだぞ」

「「承知致しました。気を付けていってらっしゃいませ!!」」

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