【㊗2万PV突破】拾い子たちを育てたら忠誠心が高くなりすぎました?!(仮)

小鳥遊 マロ

第1話 プロローグ

 俺の名前はルイス・フェイト・バハリエリ。

 貴族バハリエリ家の息子である。


 今、俺はスラム街に一人で来ている。何故、スラム街に来てるかって? 親に捨てられた子供たちを助けるためさ。まあ、それは建前なんだけど。


 本当は自分の駒を増やすために、わざわざスラム街にまで来て探している。

 え? そもそもどうやって仲間にするかって? 

おいおい、そんな簡単なことも分からないのか。

 特別に教えてやろう。


 まず最初に貧しい子供を探す。

 二つ目にその貧しい子供を絶望から救ってやる。

 この時に攻撃してきた場合はしっかりと上下関係を分からせる。

 こう見えても、俺は結構強いんだぜ。だって転生者だもん。

 そして三つ目に、優しく接してやることだ。

 そうすることで、そいつは助けてくれた俺の為に“尽くしたい”と思い、自分自身の意志で恩返しをしようとする。

 結果的に絶対に裏切らない忠誠心が高い駒の完成よ。

 だけど、忠誠心が高すぎるのも問題だけどな。

 まあ、そこら辺は、何とかするよ。何せ、この世界にはアンドロイドがあるんだからな。


 ここまで話した所で、早速お気の毒そうな子供を発見したので、助けに行ってきまーすっ!

 そこかしこから俺を獲物と見ているスラム民たちに威圧し牽制けんせいしつつ、軽い足取りで向かった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 俺はスラム街の路地の端で段ボールの上に座り、ナイフを回し遊んでいる金髪エルフの少女を見つけた。

「……ん? ──何だテメェは? 何の用だ?」

 自分に近付いて来た俺に対して、金髪エルフは鋭い眼光で睨みつけてくる。

「──俺に付いて来い。そうするなら、最低限の生活は保障しよう」

 俺は手を差し出す。

「……お前何言ってんだ? もしかしなくても、ワタシのことを舐めてんのか? スラムの奴ならそう言えば、ホイホイ付いて行くと思ってんのか?」

「いーや、別にそうは思わないな。スラムの人間は……おっとこれは失礼。スラムのゴミ虫共は社会から弾き出された落ちぶれ者だ。言わば社会不適合者のようなもの。だから、俺はその社会の異端者の一人であるお前に手を差し伸べたんだ」

「ほぅっ、随分と生意気なことを言うじゃねぇかよクソガキがっ。あまりワタシを怒らせない方が身のためだぞ?」

「仕方ない、お前みたいな奴は実力で上下をハッキリ分からした方が良さそうだな」

「……お前、ワタシのことガチで舐めんてんだろ?」

 金髪エルフは少し短気のようだ。ならこのまま怒らせよう。

「えー、別に舐めてはないゾウ〜。ただお前みたいな奴は可哀想だから、俺様がしかたなーく、ほんとにしかたなーくお前に慈悲じひをかけてやっただけだゾウー。ぱお~ん!」

 変顔しながら金髪エルフをこれでもかと煽ってやった。

「テメェっ! ガチで殺す──っ!!」

 煽ってやったら、ノってくれたようだ。

「そうこなくっちゃな!」

 金髪エルフ少女は手に持っているナイフで、俺の急所の心臓目掛けて突進してきた。もちろん、それを予測していた俺は軽々と躱し、その横を歩いてすり抜ける。

「っ!?」

「遅いな」

「チッ、ナメんなっ!」

 エルフ少女は声を荒げ、さらに攻撃がを激しくするが、俺はあいも変わらず攻撃を安々とかわす。

「ハァッ、ハァッ、クソッ……!」

「息を切らしているようだが、大丈夫か? 俺はまだ切れてすらいないんだが?」

「ほざけ!」

 金髪エルフは再度俺の心臓をナイフで突き刺すために、突進して来たので俺は腕を掴み、思い切り背負投せおいなげを喰らわした。

「ガハッ……!!」

 俺の背負投をまともに喰らい少女は悶える。

「どうだ? まだやるか?」

「……テメェは……一体何者なんだよ!」

 息を切らし途切れ途切れに大声で叫ぶエルフの少女。

「俺はただそこらにいる貴族の坊っちゃんだよ」

「……どこの貴族の坊ちゃんがこんなに強いんだよ。……どこまでも洗練された動きで、ワタシの攻撃を避けれる奴がいるかよ。ったく──」

「ところでさっきの質問に答えてもらえるか? 俺に付いてくるか、否か」

 俺は金髪エルフの上に跨り、手首を捻り持っていたナイフを落とさせる。

「はぁ、ったく。わあったよ、テメェに付いて行けばいいんだろ? 離してくれっ」

「……随分と素直なんだな」

 俺は少女の拘束を解いた瞬間、彼女は突然ニヤけた。

「──バーカッ!! 拘束をあっさり解くアホがいるかよ!」

 彼女は俺が手を緩めた隙をついて、反対の手で隠し持っていたナイフを腕に突き刺してきた……のだが。

「うん?」

 俺から逃げようと体を動かすも、一向に逃げれず、「なんでっ!?」と疑問を抱く少女。

「ナイフを腕に刺して痛がっている隙に、抜けようとする作戦は素晴らしい。──だが、それは俺には通用しない」

「──っ!! このクソがぁああああっ!!」

 エルフの少女はナイフを俺の腕から無理やり引き抜いて脱出を試みるが……。

「嘘……何で、どうして……」

 俺に突き刺されたナイフは、彼女が引き抜こうと力を込めるもビクともしない。

「なんで抜けねぇんだよっ!! チクショーっ!」

 少女はナイフはもうダメだと悟り、素手を使っての反撃を始める。彼女の拳は俺の顔面を集中的に狙ってきた。

「これが、殴り合いか。中々に痛いな。いや、これは一方的に殴られているからイジメか?」

 俺はエルフの少女が殴り疲れるその時までひたすらに殴られ続けた。

「ハァハァ、ハァハァ、こんなに殴られて……どうして倒れないんだよ。これでも、ワタシの戦闘力はエルフの森では二個旅団並だぞ」

「ハァハァ……例えそうだったとしても、この体勢でお前は本領を発揮することが出来ない。──あくまでも、その戦闘力は身動きが取れる状態でのもの……つまり、今この状況でのお前の戦闘力は──俺たち子供と同等だ。……さてと」

「う゛っ! お前、ワタシに何をするつもりだ?!」

「そうだなー、一方的にお前を殴る……とか?」

「そうかよ、なら好きに殴りな。ワタシはもうお前を散々殴ってたから疲れちまった」

「…………気が変わった」

「何?」

 俺は空間から液体が入った試験管を取り出した。

「飲め」

「はっ?」

「飲まないなら、口移しでこの俺が直々に無理やり飲まそうか?」

「ふんっ。イヤだね」

「そうか……なら口移しだな」

「なっ……!? うぐっ……!」

 俺は試験管内の液体を口に含み、有無を言わせず強引に液体を彼女に飲ませる。 

「……サイ……アクっ。何でこんな、こんな──」

「クックックッ」

「気持ち悪りぃ、笑いか……だ……うっ!」

 どうやら、身体に異変が現れ始めたようだ。

「分かってたが……私に……何をした……」

「単純明快なことさ、お前の飲んだものは腹が一瞬で水に満たされるものさ」

「たったそれだけか?」

「たったそれだけだが、今からやることにおいて効果は十分だ」

 そして俺は金髪のエルフ少女の水で膨れたお腹周りを思い切り殴る。

「ガハッ!」

 腹にパンチを食らわされた瞬間、彼女の口からキラキラが吐き出された。

「ほらな、予想どお──」

 当然、馬乗りなっていた俺にもエルフ少女の吐き出し物が顔面に直撃した。

「……俺は何で気付かなかったんだ……馬乗りになったら必然的にコイツの汚物を浴びると……」

「ハハッ……、アンタもしかしなくてもバカだろ?」

 ピキンッ!

「うあああ!!」

「黙れ、黙れ、黙れ、黙゛れ゛!!」

「ガバッ、ゴホッ、ゲホッ!!」

 俺は頭にきたため、腹を幾度となく拳で殴り続けた。その後、コイツの嘔吐物で汚れても何も感じなくなった。

「──さぁ、第二ラウンドだ。アッハッハッ!!」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「懲りたか?」

「……は、はひっ」

「俺に着いてくるか?」

「はひ、ふいてひひはふ(はい、ついて行きます)。ははは……ほほはへへ……(だから、もうやめて)」

 俺としたことが。少々、怒りに任せて殴りすぎた。

 その後、金髪エルフが再び会話出来るようになるまで、数時間かかった。

「俺はルイス・フェイト・バハリエリだ。お前の名は?」

「──カリーナ・ランセル。国同士の争いで負けた落ちこぼれのスラム民だ」

「カリーナか。それじゃあ、まずその言葉遣いを直して敬語を覚えろ」

「ゲッ! マジすか、ルイス様」

 カリーナは俺を様付けで呼んだ。うん、従順になることは悪くない。

「大マジだ。これから俺が厳しく教育していくから覚悟しておけ!」

 これが俺とカリーナとの出会いだった──




ここからスピンオフ作品である「主を崇拝する拾い子たちの日常(仮)」に飛ぶことが出来ます。

https://kakuyomu.jp/works/16817330660404191701/episodes/16817330660454089776

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