第227話 神殿へ!
確かに神殿へ行ったところで素直に会わせてもらえるとは限らない。そんな簡単に会わせてもらえるなら、私が追われる必要だってなかったはずだし……。
それに無事に会えたとしても、もしお母様が結界の守護から離れられないとしたら……。そうよ、そもそも私が『聖女』ではなかったせいで、お母様がこんなに長く拘束されることになったのなら……私が会いに行ったところでお母様が解放されるはずがない……。
どうしたらいいの……。
「そんなもの、会ってみなければ分からないだろう。その後のことは会ってから考えればいい」
皆が不安気な顔で押し黙るなか、ルギニアスがきっぱりと言い切った。
「なにを躊躇う必要がある。お前はずっと母親に会いたかったんだろう? 理由はそれだけだろうが。ならば会えばいい。それ以外のことなど後回しでいい」
ルギニアスは私の目を真っ直ぐ見詰め言った。なにを迷っているんだ、とそう言ってくれている。
「そう、だね……うん。私はお母様に……両親に会いたかっただけ。会ってなにがあったのかを聞きたかっただけ。お母様が結界から離れられないというなら、そのときは……」
「皆でその結界をなんとか出来ないか考えたらいいだろ!」
ディノがニッと笑いながら言った。リラーナもイーザンも頷いてくれている。ヴァドもオキも同じだ。うん、そうよ。そんなときはどうすべきか、どうすれば誰も犠牲にならずに済むのか……皆はきっと一緒に考えてくれるはず。
「うん。結界がどんなもので、どうしたらいいのかなんて今考えても分からない。実際に見てみないと、お母様にも会ってみないと、なにも分からない。だから……」
オルフィウス王を真っ直ぐに見詰めた。オルフィウス王も私の答えを待つように、真摯な目を向けてくれている。
「だから、私はやっぱり神殿に行きます!」
きっぱりと宣言した。じっと真っ直ぐに見詰めていたオルフィウス王は、視線を外したかと思うと目を伏せた。そして口角を上げる。
「フッ。まあそう言うだろうとは思っていた」
目を伏せながら笑ったオルフィウス王は、ゆっくり顔を上げ、改めて目を合わせると、ニッと笑った。
「では、私も共に行こう」
「え!?」
予期せぬ言葉にルギニアス以外の全員の声が重なった。驚き目を見開いていると、オルフィウス王はフフッ、となにやらそれこそ魔王のような……悪そうな笑みを浮かべていた……。
横に立っている側近らしき人が大きな溜め息を吐いているわ……。
「私も色々と気になるからな。頑なに結界の場所を隠しているのも意味が分からん。今現在結界はどうなっているのか、聖女が今後いなくなったとしたらどうなっていくのか、と、知りたいことは色々ある。それに……」
チラリとルギニアスを見たオルフィウス王はさらに悪そうな顔になり……
「かつて魔王と呼ばれていた者が今ここにいると知れば、大穴が開いた原因が元はと言えば人間のせいだと知れば、本来、魔物と戦う必要などなかったのだと知れば、大司教がどんな顔をするのか見ものではないか?」
うわぁ……な、なんかめちゃくちゃ悪い顔になってる……。オルフィウス王って冷静沈着な人なのかと思っていたら……なんというか……こっちが素なのかしら……。
明らかにルギニアスに向けて言ったのだろう、ということは容易に想像がついた。チラリとルギニアスを見ると……うわぁ……魔王が二人に……。二人して悪い顔してる……。
二人して目を合わせながら「フッフッフッ」とか笑い合ってるし……。
私たちは顔を引き攣らせながら乾いた笑いとなり、側近の人は額に手をやり大きな溜め息を吐いてるし……アハハハ……。
「まあ、それ以外にもアシェリアンの目的も知りたいところだしな」
オルフィウス王はひとしきり悪そうな顔をした後、再び冷静な顔となり言った。
「アシェリアンの目的?」
「あぁ。異世界に転生していた初代聖女の元にルギニアスが共に行った理由はなんなのか、そしてなぜわざわざルーサをこちらの世界に転生させてまでルギニアスを連れ戻したのか……」
「…………」
ルギニアスと顔を見合わせた。それはお互い分からないことだった。アリシャの転生と共にルギニアスがアリサの元へと行くことになった理由。私が死を迎えてまでこちらの世界に転生する必要。それはルギニアスをこちらの世界に連れ戻したいからだったのか。それが理由ならばなぜ連れ戻す必要があったのか。
「ルーサ、ルギニアス、君たちはそれを知る権利がある」
オルフィウス王は私とルギニアスを見たかと思うと強い視線を向け、そして皆も力強く頷いた。
ルギニアスと私は頷き合い、そして強く手を握り合った……。
その後、オルフィウス王からはアシェルーダの王の動きも気になるから、少し待て、と言われ、私たちは数日の間、ラフィージア城で滞在することとなった。
その間、ヴァドもガルヴィオ王に報告をしていたらしく、ラフィージア、ガルヴィオ、それぞれの王は、お互いの情報を共有し合い、なにやら画策しているようだ、と教えてもらった。
そして数日の時間を経て、ついに大聖堂から神殿へと向かう日がやって来た。
第5章 完
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