第201話 魔魚サパルフェン
「俺たちはもう一度潜る! それからサパルフェンを水面へと誘い出すから、水上へ頭を出したら攻撃してくれ! まだ水中から身体の一部分も出ていない場合は攻撃するな! 逃げられる!」
「分かった!」
そう指示をしたヴァドは再び潜水艇へと乗り込む。リラーナとオキもそれに続き、再び潜水艇は潜って行った。
「あの滝のあたりまで戻ろう。こちら側から攻撃を仕掛けると、おそらく滝壺へと逃げられる」
イーザンが言った言葉にディノが頷く。
「確かにな。滝側から攻撃を仕掛けて仕留める! ルーサは準備しとけよ!?」
「う、うん!」
私たちは滝壺近くへと走った。そして私は二人から少し離れた場所で待機。ルギニアスは私の傍にいる。
ディノとイーザンが剣を抜き、それを構え臨戦態勢だ。
緊張しながら湖を見詰めていると、湖が波打ち出す。なにやら大きな影も見える。もしかしてあれがサパルフェン!?
巨大な影は湖底で蠢いているのか、大きく旋回しているように見える。激しく波打ち、湖の視界が一気に悪くなる。大きく波が高くなったかと思うと、黒い影がどんどんと巨大になる。
ザバァァァァアン!!
激しい水飛沫を上げながら巨大な何かが水面を貫き飛び上がった。水面はうねり、湖岸へと大きく波が打ち付ける。ルギニアスが私を背後に庇い後退る。遠目にイーザンが手に魔力を溜めるのが分かった。
飛び出したそれは、長い身体に大きな背びれと胸びれ、鋭く尖った尻尾。顔には巨大な赤い眼に、尖った口からは鋭い牙。しかし……身体が透けている。サパルフェンと思われる巨大な魔魚の身体は光に当たると虹色に光り、透明の皮膚からは骨が透けて見える。
そして、なにやら胸びれと同じ部位からなにやら長い触手のようなものが? リボンのようにひらひらと薄くながいものが、身体の流れと共にひらひらと揺らいでいる。
水上へ大きく飛び出たサパルフェンは、天に向かって身体を真っ直ぐに昇る。身体全体が飛び出たことで、その大きさがよく分かる。海で見たクルフォスとドグナグーンと同じくらいかもしれない。海よりは圧倒的に狭い湖でその巨体を見ると、なおさら圧倒されるくらいの大きさだ。
イーザンがディノと顔を見合わせ頷き合う。そして、魔導剣に魔力を込めたかと思うと、大きく振り抜き雷撃が迸る。水面を走り、サパルフェンまで届いた雷撃は、水上へと飛び上がったサパルフェンの尾を捕え、そのまま勢い良く頭まで一気に走る。
『ギュァァァァァア!!』
身体を捕えた雷撃から痛みを感じるのか激しい声を上げたサパルフェン。
ザバァァァァン!! と、激しい水飛沫を上げながら、横倒しに水面へと身体を打ち付けたサパルフェンは、湖に潜ろうと身体を捻る。サパルフェンの身体の周りにはいまだに雷撃が迸っているが、しかし、利いていないのか動きに変化はない。
イーザンが再び雷撃を飛ばし、ディノは大きく跳躍した。サパルフェンの身体に乗ったディノは斬り付ける。しかし、サパルフェンの触手が大きく振り上げられたかと思うと、ディノの剣を身体ごと薙ぎ払う。
「ちっ」
ディノは剣で触手を受け止めるが、その勢いのまま吹っ飛ばされ、身体を回転させながら湖岸へと降り立つ。
イーザンが片手を真っ直ぐ伸ばし、魔力を込めた。竜巻を起こしサパルフェンの身体の周りを覆う。そのまま竜巻を維持すると、手に集中し竜巻を抑えつけるように、掌を下に向けグググと抑えつける。すると、竜巻は水面へと潜り、サパルフェンの身体の下を覆うように沈んでいく。竜巻は水を絡め取り、水の壁を作った。そして、グッと拳を握り締めると、竜巻はサパルフェンを牢に閉じ込めるかのように動きを止めた。
「ディノ! 今のうちに!」
「おう!」
水竜巻の牢に閉じ込められたサパルフェンに向かい、再び大きく跳躍したディノはサパルフェンの眼に向かって剣を突き立てる。しかし、激しく暴れるサパルフェンの身体がディノを吹っ飛ばす。サパルフェンの身体の上に叩きつけられたディノはサパルフェンの上を走った。
水中に潜ろうとするサパルフェンは、しかし、イーザンの竜巻にその進路を阻まれ、じたばたと暴れている。その隙にディノは再び頭に向かい走り出した。ディノを排除しようと触手が大きく振り回される。その触手を避けながらディノは走る。襲い来る触手を剣で薙ぎ払い、頭を目指し眼へと剣を突き立てた。
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次回、4月15日更新予定です。
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