第180話 奇妙な魔導具
「なんだ!?」
ディノとイーザンは剣を抜き身構える。噴煙が上がり辺りがよく見えない。
「なんの気配も感じないぞ!?」
「あぁ、魔獣の気配もない」
ディノとイーザンがそう呟き警戒している。確かに人の気配もなければ魔獣らしき気配もない。オキとヴァドも怪訝な顔をしている。
ん? でもちょっと待って……なにかの気配を感じるような……。
「魔獣じゃない」
ルギニアスが呟いた瞬間、噴煙を貫くようになにかがキラリと光った。それと同時に再び爆発音が響く。
ドォォォオオン!! という激しい音と共に再び噴煙が上がる。
「一体なんなんだよ!」
ディノの叫びと共にルギニアスが見詰める方向を感知してみる。すると、なにやら遠くに魔石を感じる?
「なんだろう、魔石がある……」
「魔石?」
私が呟いた言葉に全員が振り向いた。ルギニアスは相変わらず一点を見詰めたままだ。
「うん、ここからは少し離れた場所に魔石を感じる……あっ」
「なんだ?」
「ひとつ、じゃない?」
ガバッと顔を上げ、ルギニアスを見ると、フンと鼻を鳴らした。
「小賢しい」
そしてルギニアスはゆっくり歩き始めた。
「ル、ルギニアス!? どこに行くの!?」
歩き出したルギニアスに向かって声を掛けると、少しだけ顔を向けたルギニアスはニッと笑った。
「そこにいろ」
そう言うとルギニアスは自身が展開させた障壁結界をすり抜けたかと思うと、足元に青白い魔法陣を浮かび上がらせた。そして弾かれるかのように一気に地を蹴り飛んだ。その一歩は……一歩と呼んで良いものかと思う程の跳躍を見せたルギニアスは一気に魔石を感じた方向へと飛んだ。
噴煙がおさまり、遠目にルギニアスの背中が見えるが、瞬時にそこまで行ったルギニアスは手を振り上げると、なにやら勢い良く光を走らせ木々諸共斬り裂いていた。
ルギニアスの目の前に広がる木々はドォォンと音を立てながら倒れていく。いまだに魔石の力は感じるが、なにやら発動は収まったようだ。
それを感じるとルギニアスはこちらに振り向き、サッと手を挙げた。すると、私たちの周りにある障壁結界は氷が溶けるように消え去った。
「おいおい、一体なんだったんだよ。凄いな、ルギニアスは」
ヴァドがルギニアスを見詰めながら目を見開いていた。私たちは苦笑しつつ、ルギニアスの元まで駆け寄る。
「ルギニアス! 一体なにがいたの!?」
ルギニアスの傍までたどり着くと、視線の先になにやら見たことがないような形の魔導具らしきものがあった。
「なんだこれ?」
ディノがしゃがんでそれをまじまじと見詰める。私やリラーナ、イーザンも同様にそれを眺める。
リラーナはその魔導具が完全に壊れ、動かないことを確認するとそれを持ち上げた。
リラーナが持つその魔導具は、ルギニアスに斬り裂かれ、真っ二つとなってはいるが、細長い筒のような形をしている。それだけだ。特に周りになにか装飾があったり、部品があったりする訳ではない。ただ、筒の先に穴が開いている。
同様のものがあちこちに転がっているが、全てのその魔導具がルギニアスの攻撃に斬り裂かれていた。
リラーナはそれをあちこちの方向から眺め、私に魔石の位置や種類を聞く。
「ねぇ、ルーサ、どんな魔石でどこに入ってる?」
「えっとね……」
私はリラーナの持つ魔導具に意識を集中させ、魔石を感知する。
「筒の穴とは反対のところに小さな魔石がある。種類は……雷系と風系と大地系……かな?」
「なるほど」
リラーナは真剣な顔で考え込むと自分で確かめるように口にした。
「多分風系と大地系の魔力で、周りで動く気配を自動で察知しているのかも……、それで近付いたものを攻撃してくる……」
「自動で……」
「だから魔力や魔獣の気配がなかったわけか……」
「うん、多分。しかも発動の魔力もとても小さく、少ない」
イーザンが呟いた言葉にリラーナが頷く。
「魔石の感知はルーサくらいしか出来ない。生き物の気配や発動された魔法や魔力がなければ、私にも感知は不可能だしな」
イーザンは私を見ながら言った。確かに魔石の魔力は魔石精製師にしか感知は出来ない。大きく魔力が動く発動ならばイーザンも感知出来るかもしれないが、今回のように自動で発動、しかも発動するときの魔力も極めて少ない、となるとイーザンがいくら有能な魔導師でも難しいはずだ。
「そんな少ない魔力の動きであの威力か……」
先程の爆発を思い出す。障壁結界に当たった攻撃はかなりの激しい爆発を巻き起こしていた。ルギニアスが障壁結界を張ってくれなければ、誰かが大怪我を負っていたかもしれない。
「誰がそんなことを……って、もしかして魔傀儡師か?」
ディノの言葉に全員が無言となった。それはおそらく全員が同じ考えだったからだ。なぜ魔傀儡師がそんなことを……もし誰かが客としてやって来たら危険なのでは……。いや、そもそもが客を拒絶している……?
そして全員が無言のなか、再びルギニアスがある一点に視線をやり、私を背後に庇うように前へと立った。
「またなにか来たぞ」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべたルギニアスは、手に魔力を込めた。
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