第139話 魔石の買い取り

「私の魔石?」

「うん、旅をするのにも元手がいるでしょ? ルーサの魔石なら信頼出来るし、僕が買い取るよ」

「魔石って自分の店でなくても売って良いの?」


 私が言うよりも先にリラーナが反応した。アランはリラーナを見ながらにこりと笑う。


「うん、魔石精製師の資格を持っていることが証明さえ出来れば、どこの魔石屋にでも魔石を売れるよ」


 アランは説明するように言葉を続けた。


「ダラスさんはやっていなかったんだろうけど、自分で精製するのが追い付かなったり、自分よりも腕が良い魔石精製師の魔石だったりすると、買い取って自分の店で売ったりする店も多いよ。

 買い取った魔石は、精製した魔石精製師の名と共に販売される。国への報告書にも魔石精製師の名と精製した魔石を記載するからね。

 販売はその店次第だけど、通常買い取った価格の二割増くらいで販売されているかな。自分で販売するよりは安く買い取られるけど、店を持たなかったり、ルーサのように旅をしていると、魔石精製師はそうやって魔石を販売して稼ぐらしいよ?」


「へぇぇ、そうなのね……知らなかった……」

「アハハ、ダラスさんは買い取りなんてしないだろうから、知らなくても無理ないと思うよ」


 そう言って笑うアラン。


「だからさ、エルシュに来たときは僕が買い取るから、ルーサの魔石はうちによろしく」


 二ッと笑うアランに、すでに商売っ気が板についているなぁ、と感心し笑ってしまった。


「うん、こちらこそよろしくね」


「そっか、私の魔導具も他の街の魔導具屋に買い取りしてもらえば良いしね。ルーサの魔石もそうやって買い取りしてもらえるなら、ディノやイーザンの護衛の仕事だけに頼らなくて良いかもね!」

「うん!」


 リラーナが言った言葉に頷く。そうなのよね、旅をするために必要なお金。どうしてもディノやイーザンに頼ることになってしまうのが心苦しかった。

 でもリラーナの魔導具や私の魔石が売れるのなら、それで収入を得られる。今後それらを合わせた収入があれば生活費に困ることはないはず!


「おぉ、そんな手があったんだな! まあ俺たちは別に護衛の仕事は苦ではないから問題ないが、ルーサやリラーナがそうやって収入を得てくれると気楽にはなるな」


 ディノもそう言ってニッと笑った。



 そうやって店を持つための知識なども色々教えてもらったり、今持っている魔石を買い取ってもらったりと、様々な話をしアランとは別れた。


「さて、じゃあ魔導具屋巡りでもするか?」

「あ、私はアランのお師匠さんのお店も見てみたいし先に行ってて。後から追い付くから」


 リラーナは魔導具屋に行きたくてうずうずしているようだし、私に付き合わせたら悪いしね。


「じゃあ、ルーサには俺が付いて行くから、リラーナとイーザンは先に魔導具屋に行くか? 別行動にして後で合流するか」


「ルーサ、良いの? お師匠さんのお店行ってからでも良いよ?」

「ううん、良いよ。リラーナ、さっきから魔導具屋に行きたくてうずうずしてるじゃない」


 そう言って笑うとリラーナは照れ笑いになった。


「バレてたか」

「フフ、バレバレよ。良いからイーザンと一緒に先に行ってて」

「分かった、じゃあ後でね」

「うん」


 リラーナとイーザンは魔導具屋へと向かい、私とディノはアランの師匠のお店に向かった。アランに教えてもらった通り、それほど離れてもいない場所にアランの師匠のお店はあった。

 店内はダラスさんのお店と似たような雰囲気で、置いている魔石もダラスさんのものと比べても負けず劣らす素晴らしい出来栄えのものだった。強力な魔石に、精密に精製されたのだろうと思うほどの透明感が半端ない魔石やら、見ているだけでも圧倒されそうだった。


 お師匠さんもアランのお師匠さんだなぁ、と思えるほどに穏やかで優し気な雰囲気の人だった。ダラスさんの怖そうな雰囲気とは全然違うな、とクスッと笑ってしまう。


 私が魔石精製師であることはなぜかバレて、やはり凄い魔石精製師は他の魔石精製師のことすら分かるのか、と感心をしてしまった。


 そうやって一通り見学させてもらい、お師匠さんに挨拶をし店を出た瞬間、なにやら空から大きな物音が聞こえて来た。


 今まで聞いたことがないような大きな音に驚き、空を見上げると、建物の合間からなにかが大きな影を落とし過ぎ去って行った。


「!? い、今のなに!?」


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