第134話 アランとの再会
ララさんと話していたお客さんがまさかアランだったなんて! お互い駆け寄り両手を合わせ再会を喜んだ。
「まさかルーサに会えるとは! エルシュに来てくれたんだね!」
「うん! アランの店に行こうとは思っていたけれど、エルシュに着いた初日にいきなり会えるなんて!」
お互い興奮して話していると、驚いたリラーナたちが私の後ろに続いた。ララさんも驚いた顔をしている。
「ちょっと、ルーサ、知り合いなの?」
「あぁ、うん。魔石精製師の試験で知り合ったエルシュ出身の友達がいるって言ってたでしょ? それがこのアランなの」
リラーナもディノも「あぁ!」と同時に声を上げた。
「アラン、ルーサさんと知り合いだったの?」
ララさんがアランの腕を引っ張り聞いた。アランはララさんに目をやるとなぜか驚いた顔をする。
「姉さんこそ、ルーサを知ってるの?」
「姉さん!?」
アランがララさんに向かって言った言葉に驚き、つい大声になってしまった。
「姉さんて、ララさんってアランのお姉さんなの!?」
「え、う、うん。ルーサと姉さんてなんで知り合い?」
アランは私とララさんを交互に見ながら聞く。
「さっき言ったでしょ。馬車で乗り合わせた人たちが獣から護ってくれたのよ、って」
「え!! それってルーサたちのことだったんだ……」
お互いが顔を見合わせ、皆驚きの顔だった。
「いやぁ、まさか姉さんが王都から帰る途中に同乗していたのがルーサたちだったなんてね」
「本当にびっくりしたよ。ララさんがまさかアランのお姉さんだったなんて」
私たちとアランはララさんのお店で一緒に夕食を食べることになり、大きなテーブルに五人で席に着いた。
ララさんは助けてくれたお礼だ、と言い、好きなものを食べてちょうだい、と色々料理を持って来てくれる。
料理が並ぶ間に、お互いの近況を話す。
アランは王都から帰ったあと、すぐさま店の準備を始め、師匠の伝手を頼り、店を宣伝し、店頭に並べるための魔石を精製したり、と忙しい日々を送っていたそうだ。
「ようやく先日店を開店させることが出来たから、またエルシュにいる間に遊びに来てよ」
「うん!」
「で、ルーサはどうしてたの? 早速エルシュに来てくれるとは思わなかったよ」
アハハと嬉しそうに笑うアランに、リラーナやディノ、イーザンと顔を合わせ苦笑した。
「あー、私の場合は仕方ないというかなんというか……」
「?」
アランには私がローグ伯爵家の人間だということは伏せつつ、王都でちょっとした問題が起こり旅立つことになった。そしてガルヴィオに行きたいからエルシュに来たのだ、と説明をした。
「え、問題って大丈夫なの?」
「うーん、まあ、なんとか……?」
「なんとかって」
アランは苦笑した。
「でもそのおかげで姉さんと姪っ子は獣の群れから助けてもらえたんだもんな。ありがとう」
アランはディノとイーザンに向かって頭を下げた。ディノはいやいや、と頭を掻きながら照れていたが、イーザンはなぜか私をじっと見た。
「今さらだが、ルーサ」
「え?」
イーザンにじろりと睨まれたじろぐ。
「今後あのような危険な真似は二度とするな」
「あ……」
アランはなんのことだ、ときょろきょろ私たちを見ていたが、リラーナとディノは思い出したかのように、イーザンと同様に声を上げる。
「そうよ! 二度としないで! あんな怖いこと……ルーサが死んじゃうかと思った……」
若干泣きそうな顔になったリラーナ。ディノも真面目な顔で頷いた。
「俺たちが一匹逃したことが一番悪い。だがあんなときは逃げてくれ」
「う、うん、ごめん」
なんだなんだ、とオロオロとしているアランにそのときのことを話すと真っ青になっていた。そして全員から責められるのでした……。ルギニアスがなにも言わないことだけが救いだわ。
そのとき狼に刺さっていた毒針を取り出し、アランの意見も聞いてみる。イーザンいわく、裏の世界で働く者がよく使う暗器だろう、と。
「裏の世界……」
「針か……猛毒を仕込んで、体内深くまで刺し込むと、その毒が体内に浸透し、一瞬で身体が麻痺したり、というのは聞いたことがあるな」
アランが毒針を眺めながら言った。
「暗器なんてその辺の武器屋では買えない。そんなものを扱える人間が俺たちを見張っていた?」
ディノが呟いた言葉にぎくりとする。やはりいつも私を尾行していた人物が私を助けてくれた? そんな武器が扱えるということは裏の世界といっても暗殺……とか? ブルッと身震いがした。なぜそんな人間に私は尾行され、しかもなぜ助けてくれたのか……。
「なんだか難しい話をしているようだけど、とりあえずお腹空いたでしょ? たっぷり食べてちょうだい」
ララさんが料理を手に私たちの頭上から声を掛けた。毒針を広げた布を「ほら、そんな物騒なもの片付けて」と料理を置こうと促すと、イーザンは慌てて毒針を再び丁寧に包み、鞄へと片付けた。
テーブルの上にはたくさんの料理が並び、港町らしく魚料理が多く並んでいた。
「わぁ、これなに?」
リラーナが興奮しながら、大皿の上に並ぶ料理を見詰めた。一口サイズに薄く切られた白く半透明のものが花のように飾られている。
「あ、これ……」
昔、一度だけお父様とお母様と一緒に食べたあの記憶……。
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