第96話 魔力操作
ドラゴンは再び空高く舞い上がったかと思うと急降下と共に大きく口を開いた。鋭い牙が覗き見え、喉の奥に光が集まったかと思うと、激しい炎を噴き出した。
ゴォォォォオオオオ!!
激しい炎を噴き出しながら狙いを定めるように二人を襲う。イーザンは竜巻を起こし、その炎を巻き取っていく。しかし激しい勢いのまま炎を噴き出し続けるため、竜巻が巻き取った炎は次第に炎の柱となっていく。
炎の柱はドラゴンの翼から巻き起こる風に煽られ二人を襲う。
「ちっ」
イーザンは竜巻を必死に操ろうとしていた。その隙にディノはドラゴンへと向かって走る。大きく跳躍したかと思うとドラゴンが低空飛行している瞬間、背に飛び乗る。そして剣を突き立てた。
しかしドラゴンの鱗は硬い。ディノの剣がドラゴンの背を貫くことはなかった。ガキンと鈍い音が響いたと同時にドラゴンの飛ぶ勢いが増す。一気に上昇した弾みにディノは振り落とされる。
イーザンは再び向かってくるドラゴンに目を向け、必死に操っていた炎の柱を、風を解放するように大きく弾けさせた。炎の柱はまるで花火のように四方八方に飛び散り、ドラゴンの動きを止めた。
『グルゥゥァァァァアアアア!!』
ドラゴンは再び大きく咆哮を上げた。大地は震え、木々が揺れる。鋭い爪が生えた前脚でイーザンを斬り裂いた。大きく後ろへ跳躍し躱したかと思えたが、服は斬り裂かれ、そこから見えるイーザンの腹からは血が滲んでいた。
「イーザン!!」
苦悶の表情を浮かべ、それでも魔導剣に魔力を込める。魔導剣の刃には雷が迸り、バチバチと音を立てていた。
「ディノ!!」
イーザンが叫ぶと同時に、それが分かっていたのか、ディノはイーザンから魔導剣を受け取りドラゴンの真下へと一気に走り込んだ。そして首目掛けて魔導剣を振り上げる。
魔導剣から放たれた雷撃がドラゴンの身体を貫いた。しかし……
「効いてない!?」
まるで素通りでもしたかのように、雷撃はドラゴンの上空まで突き抜けると消えた。
『グゥォォオオオ!!』
太い尻尾をディノ目掛けて振り下ろす。
「ぐあぁっ!!」
ズシィィィィイイイン!! と、大地が揺れ、ひび割れた。
ディノはドラゴンの尻尾を魔導剣で防いだにしろ、地面に叩きつけられ背中は地面を抉った。
「ディノ!!」
あぁ……どうしよう……二人が死んでしまう……。こんなときに私はただ見ているだけなの!? なにも出来ないの!? どうして私はこんなに無力なのよ!! 二人を助けたいのに!! なにか……なにか方法はないの!?
再びドラゴンが炎を噴き出そうとしている!! 喉元に魔力が集まっている!! …………え、魔力? どうやら無意識に魔力感知を行っていたようだ。ドラゴンの魔力が喉元に集まるのが分かる。
「ディノ!! イーザン!! また炎がくる!!」
「「!?」」
二人は驚いた顔をしたが、その瞬間ドラゴンから炎が噴き出し、一歩早くそれを躱した。
魔力……魔力感知でドラゴンの魔力移動が分かる……ちょっと待ってよ? 魔力移動が分かる……ということは魔素の位置も分かる?
じっくりとドラゴンの体内を感知していく。すると魔力の動く源の部分に魔素を感じた。結晶化するには死んだ瞬間の血でないと出来ない。しかし、結晶化しない場合は?
今、結晶化は出来ない、する必要もない。まだ倒していないのだから。じゃあ、結晶化はしないにしろ、その魔素と魔力をコントロールすることは出来ないのかしら?
えぇい、考えるよりやってみるのよ! のんびり考えている暇はないわ! 二人ともどんどん追い詰められている!!
何度となく攻撃をしかけてはいるが、ことごとくドラゴンには効いていない。それどころか二人のほうは徐々に体力を消耗し、傷付き、息が上がっていっている。
集中……集中するのよ。ドラゴンの体内。魔素から生まれ出る魔力。それが今度どこへ向かうのか。どんな魔力なのか。そしてそれを感知し……抑える!!
ドラゴンの体内から発生した魔力は身体を巡り、喉元に集まった。そしてそこに徐々に魔力が集まり、放出されようとする瞬間、私は突き出した手をぐっと握り締めた。
『グルゥゥゥ……』
「「!?」」
ドラゴンはなにが起こったのか分からないといった様子で、開いていた口を閉じた。そして低い鳴き声で唸っている。
やった!! 魔力を抑えられた!! 放出されようとした瞬間、私の魔力コントロールでそれを体内へと戻し馴染ませた。炎として噴き出そうとしていた魔力はドラゴンの体内を再び循環し、次の炎を放出するには再び魔力を喉元に溜めなければならない。
「炎はもう来ない!! その間になんとか攻撃を!!」
ディノとイーザンは満身創痍ながらもお互い顔を見合わせ、フッと笑った。
「なんのことか分からんが助かった!!」
ディノは魔力を込めた魔導剣を再び受け取り、攻撃を仕掛けた。
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