第41話 魔物と魔獣と魔蟲と魔魚の魔石
「採取するのは危険だが、しかし強力な魔力を付与出来るからやはり必要にはなってくるんだよなぁ」
「強力な魔力……」
「あぁ。主に戦闘に使う攻撃や防御のための魔力を付与出来る。剣や盾、魔導師の杖などに埋め込み魔力を発動させるのだが、魔石の力が強いとその分使い手の力も増幅される。だから戦闘には必要不可欠だ」
「そうなんですね」
やはり魔石精製師を目指すなら必ず必要となってくる魔石よね……怖いけれど頑張らないと。
話を聞いているうちに、魔導師さんはその魔蟲の魔石に魔力を込め始めた。
両手で包み込むように魔石を大事そうに掌に乗せ、魔導師さんは目を瞑り集中し出す。魔石の周り、魔導師さんの手から金色の光が溢れ出し、魔石を包む。
魔石はモヤモヤと内部が蠢き出し、それが徐々に魔石内部に広がってきたかと思うと、内部を全て浸食したかのようにモヤモヤと蠢いていた。そして爆発するように光を放つ。
私もリラーナも腕で顔を庇い、目を細めながらゆっくりと魔石を見た。
黄色かった魔石は少し薄い黄色となり、とても澄んだ透明感でキラリと輝く。
「完了です」
魔導師さんはその魔石を私に差し出してくれた。
「見ても良いですか?」
ミスティアさんに確認すると、ニッと笑い頷いた。
魔導師さんから魔石を受け取り、両掌に乗せじっくりと見詰める。
魔石の内部はずっとキラキラと煌めいていて、普通の宝石とは違うことが見るだけでも分かる。ずっと見詰めていても飽きないくらいに、不思議で面白い。キラキラと煌めく内部は外の光を反射しているのか、それとも内部の色なのか、様々な濃淡の色で煌めいている。
そして魔力を感知してみると、天然魔石を感知したときとは明らかに違う魔力を感じた。
魔石自体の魔素と魔力、それはおそらくすでに魔力付与が行われる前のものとは違っているのだろうと思う。なぜならすでに魔石自体の魔力と魔導師さんが付与した魔力が混ざり合っているようだから。
別の魔力を感じることはなく、一つの魔力として魔石の魔力を感じる。天然魔石からは感じなかった、少し鳥肌が立つような、そんな強力な魔力を感じる。魔石本来の魔力が禍々しいものではないのだろうけれど、それでも天然魔石には感じることのない強力な力。圧倒的な力。それが怖くも感じる。
こんな強力な魔力の血や体液を結晶化するのって……こちらもどれほどの魔力を必要とするのだろうか。ふと不安になる。
「凄いですね……とても強力な魔力……」
「ふむ、さすが魔石精製師の卵だな。魔石の魔力を感じるか」
「えぇ。少し怖いと感じるくらいです」
苦笑しながら魔石を魔導師さんに返した。
「まあ確かに魔獣や魔蟲から採取する魔石は強力らしいから恐怖を感じるのも不思議ではないな。魔物はもっと強力らしいが」
「魔物ですか?」
「あぁ。魔物の魔石はさらに強いようだ。滅多に見られないからかなり希少品だがな。しかし魔物の魔石は攻撃系だろうが防御系だろうが魔力を付与出来るから重宝するんだ」
「でもあまり手に入らない、と」
「アハハ、そういうことだ」
ちなみに魔獣の魔石も攻撃系、防御系どちらの魔力も付与出来るらしい。しかし魔物の魔石よりはやはり力は劣るらしく、どうやっても魔物の魔石が一番強力らしいのだ。でも手に入れにくい魔石……難しいものね。
魔蟲の魔石は攻撃系の魔力付与、魔魚の魔石は防御系の魔力付与に使われるらしい。色々と教えてもらえ、様々な魔石や魔力付与も見せてもらえて、私の夢中になりっぷりに、リラーナが苦笑していたことは気付かなかったことにした……。
「お二人とも魔力付与見学はどうでしたか?」
声を掛けられ振り向くとウルバさんが戻ってきていた。
「薬物研究所はすみません、今日は無理だそうです。その代わり植物園の見学は許可していただきました。行ってみますか?」
「「お願いします!」」
研究所の見学は残念だけれど、正直なところ植物園のほうが楽しみだったりする。どんな植物があるのかしら。
ミスティアさんやクリスさん、魔導師さんたちにお礼を言う。
「「ありがとうございました」」
「うむ、またいつでも来るといい」
「はい!」
目を輝かせて勢い良く返事をすると、全員に笑われたのだった。クリスさんだけは相変わらず無表情……というか不機嫌そうな顔だったけれど……。
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