第33話 ルーちゃん見付かる!?
「そ、それよりも本当に大丈夫なの?」
ダラスさんたちに背を向け、胸元に握り締めたルギニアス。あ、怒られたからそっと抱えているけどね。
「別に俺は誰に見られようが関係ない」
「え、そうなの? でも見付かっちゃったら、なんて説明したら良いのよ」
そもそもルギニアスが何者なのか、私すら分かっていないのに説明出来ない。もし見付かって聞かれても「ぬいぐるみ」としか答えられない。
「だから魔王だって言ってるだろうが」
「『まおー』ってだからなに?」
「まおーじゃなくて魔王だって言ってるだろうが!」
ルギニアスがキレた。
「だからなんで魔王なのよ。魔王って封じられてるはずでしょ? ルギニアスみたいなちんちくりんが魔王なんて言われて信じるほうが馬鹿でしょ!」
「ちんちくりんとか言うな!!」
小声でやいやいと言い合っていると、ウルバさんが声を掛けてきた。
「ルーサさん、大丈夫ですか? なにか見付かりましたか?」
「あ、すみません。まだ見付かりません」
「そうですか、もしなにか見付けたら言ってくださいね」
「はーい」
慌てて背後に隠しながらウルバさんと話し、再びくるりと向き直るとルギニアスがまた苦悶の表情を浮かべていた。
「だから握り締めるなって言ってるだろうが」
「ご、ごめんてば」
アハハ、と笑ってごまかす。
「魔王かどうかはまあこの際どうでもいいけどさ、ルギニアスっていつもどこにいるの? 見付かってもいいならずっと傍にいてくれたらいいのに」
それなら楽しいのになぁ、と口にしてみたら、ルギニアスは眉間に皺を寄せた。ぷくぷくの可愛い顔に眉間の皺……プッ。
「なんだ?」
ギロリと睨まれ……怖くない。また笑いそうになって必死に我慢。
「んん、なんでもないよ」
「今はまだずっとはいられない」
「どうして?」
「まだ力が……」
「力?」
「そんなことよりもお前は魔石感知するんだろうが」
「あ!」
ルギニアスが言葉を遮るように話題を変えた。しまった、魔石感知!
「広範囲を長く感知しているとバテるのは当然だ。だが狭い範囲だからと集中力を全開にして感知し、それを繰り返していると結局はバテるのも早い。だから瞬間的に広範囲を感知し、感覚だけ覚えておくんだ。そして違和感を感じ取った場所だけを重点的に感知しろ」
「…………」
「なんだよ」
ちんちくりんのルギニアスから、あまりに真面目で論理的な発言をされたため、一瞬固まってしまった。
「いや……別に」
「なら早くやれ」
「ぐぬぬ」
なんだかちんちくりんルギニアスに言われたことが悔しいが、確かにそうだなーと思えたので、言われるがままに広範囲に感知をしてみた。なぜルギニアスがそんなことを知っているのかはまあ……別にいいか……。少し疑問に思ったが、とりあえず今は魔石感知!
先程とは違い、じっくりと感知するのではなく瞬間的に。瞬間的に広範囲に網目のように神経の糸を飛ばす。そのとき感じた点在する違和感、それがなにかはこの感知だけでは分からないが、それでもそこだけに絞って部分的感知をするなら、先程やっていた感知よりもかなり楽になる!
「よし、ここを感知してみるわよ」
ルギニアスは再び私の頭の上に乗り、感知を見守ってくれている。
先程感じた違和感の場所を重点的に感知していく。すると先程ダラスさんに教えてもらったときのような魔素と魔力を感じた!
「ウルバさん!! ここ!!」
見付けた場所を指差しウルバさんを呼ぶ。ウルバさんは嬉々とした顔でこちらに駆け寄ると、慎重に掘り起こしていった。
「おぉ、ルーサさん! 初めての魔石感知成功ですね!」
そう言ってウルバさんは掘り起こしたものを掌に乗せ、こちらに見せてくれた。
まだ砂が付いたそれは黄色く煌めき、魔力を感知することが出来た。
まぎれもなく魔石だった。
「やった!! ルーちゃん!!」
「ルーちゃん言うな!!」
喜びのあまりルーちゃん呼びをしたら怒られた。
「え、それなに?」
ウルバさんが魔石を手に持ちながら、驚いた顔で私の頭の上に釘付けとなっていた。
あ、しまった……ど、どうしよ……
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