恋の追い風

 夏の風が彼女の黒い髪をさらう。何て事ないありふれた光景だ。けれど俺の目にはそれがわざとらしく見えた。まるで誰かの手が彼女の髪を掬ったかのようで。


「来てくれてありがとう」


 屋上で俺を待っていた彼女が笑顔で振り返る。


「あのね、私……」


 夏疾風が俺の火照った身体をからかうように撫でた。

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