破壊に至る過程

 夕食を済ませてから数時間後、散歩にでる。

 散歩のコースは人気のない暗い道。そこを月明りを頼り進む。だが、民家の前を通る時、そのお宅の玄関付近に備え付けられたライトが私の姿に反応して明滅する。思わず、早歩きになった。何も悪いこともしていないのに。仕事もしていないのに。

 このライトのセンサーは反応がとてもよく、帰りにその道の端を歩いても、光の連射が私を捉えた。夜を歩く善良な私は光に弱い。完敗だ。悪人以外にもライトの効果は抜群だ。

 ということで次の日から散歩コース変更。車の通りが多く、街灯も等間隔に並ぶコースを行く。

 光は多いが民家に設置された不審者滅亡ライトよりも断然よい。街灯の明かりは優しい明かり。違いが分かるんです。

 だが、歩いている途中に問題が起きた。なんとクモの巣に顔面を突っ込んでしまった。

 最初こそ、手で巣を巻き取りながら、なんと不運なんだ! と思ったけれど。よくよく考えてみれば、不運なのはクモの方だと思い至った。すまなかった。せっかくの書き入れ時だろうに。

 センサーライトは光らせ、巣は壊し、職は無し。

 

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どきどき❤心境報告(半引きこもり) 猫又大統領 @arigatou

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