【読切】BSS!?告白現場に遭遇した件

天風 繋

【読み切り版】

俺の名前は、大庭奏太。

どこにでもいる平凡な高校生だ。

ただ一つ人とは違うものがあるとすれば、幼馴染みがいることくらいだろうか。

ただ、その幼馴染みが問題で・・・。

彼女、藍川遥は勉強もスポーツもできる完璧超人みたいな女の子。

容姿も整っていた大和撫子を地でいくように長い黒髪を靡かせている。

そんな、遥とは家が隣で親同士が親友ということもあって物心ついた時から共に育ってきた。

そんな彼女は、実は私生活ではかなりのポンコツだ。

そして、学校では俺とは距離を置いている。

私生活の姿を知られたくないのだろう。


ある日の放課後。

教室の清掃も終わり、ゴミの片づけをしようと校舎裏にある焼却炉へと俺は向かう。

昇降口で下足に履き替え、焼却炉に向かっていた。

焼却炉は、昇降口のある新校舎ではなく、その裏にある旧校舎裏にある。

ゴミ箱を下げながら向かうには地味に面倒くさい距離だ。

俺が。新校舎裏に差し掛かろうとした時、話し声が聞こえるのに気づいた。

俺は、咄嗟に物陰に隠れてしまった。

隠れた理由は、自分でもわからなかった。

そして、そこにいたのは遥と誰かはわからない男子と一緒にいた。

うちの高校は、男女ともにグレーのブレザーで。男子のネクタイは紺色で、女子は赤のタイをしている。


「藍川さん!急に呼び出してごめんなさい」

「別に・・・それで?」


相変わらず、男子には塩対応だな。

そのおかげで、俺は助かっているのだけど。

ん?助かっているってなにがだろう・・・。


「俺、君の事が・・・好きなんだ。付き合ってほしい」

「無理、それだけ?」


男子生徒は、絶句して沈黙する。

しかし、しばらくするとブツブツと何かをつぶやきだす。

なんか、やばい気がする。

俺は、スマホを取り出し録画モードにする。


「なんだよ、その態度は。

俺が、真剣に告白したっていうのに」

「きゃっ」


その瞬間。遥の手首を男子が掴む。

まずいな。

胸ポケットに、スマホを押し込む。

サイズ的にカメラはポケットから覗いている。

ちょうどいいだろう。

俺は、そう思うや否や飛び出していた。

そして、男子生徒の手首を握り、力を籠める。


「奏ちゃん!?」

「ぐぁ、何をする」

「ん?何をするはお前だろ。

遥が、男子には塩対応なのは周知の事実だろうが。

それが、気に食わないなら告白なんてするなよ」


俺は、握る力を強めていく。

そして、男子生徒が彼女の手首を話した瞬間、彼の手首の関節を極める。


「ぐぁ、放せ!」

「いや、その前に謝罪が先だろ」

「知るかそんなこと!」


俺の中で。何かのスイッチが入った。

そして、乾いた音がした。

俺は、手を放し地面に向けて放る。

男子生徒は、尻餅をつき右手を抑えている。


「一部始終は、録画してるんでもう遥に近づかないでくださいね、先輩」


俺は、遥に合図をしてその場を後にした。

おっと、ゴミ捨ての途中だった。

旧校舎裏に向かわなきゃ。

ゴミ箱を抱える。

そして、彼女は俺の後ろをついてきた。

焼却炉に着くと遥は俺の背中に身を寄せてきた。


「奏ちゃん、ありがとう」

「全く、遥は目立つんだからもう少し気をつけろよ。

いつも俺がそばにいるんじゃないんだから。

今日だって、掃除当番じゃなきゃ助けられなかった」

「そうだよね・・・奏ちゃんのそばにいれば安全だよね」


遥は、思考を巡らせていた。

俺は、焼却炉にゴミを捨てる。

そして、さっきの道ではなくグラウンド寄りの道を選んで昇降口を目指して歩き始めた。


「ねえねえ、奏ちゃん」

「なんだよ、遥」


遥は、俺の横を並んで歩いていた。

俺は、視線を彼女に向ける。


「あのね、お家での私になっても学校でもそばにいてくれる?」

「いや、そんな遥をほっといたら俺の心臓が止まるんだけど」

「それは、さすがに酷くないかな?」


遥は、頬を膨らませて抗議していた。

でも、普段のポンコツな遥をほっといたら俺は気が気じゃないからそばを離れられないんだけど。

だって、普段のポンコツさ加減を知っているから。


「じゃあ、奏ちゃんはずっとそばにいてくれる?」


遥は、頬を染めながらそう言っていた。

それも上目遣いで。

俺の胸が早鐘を打つ。


「いいよ・・・なんか告白みたいだな」

「あはは、たしかに・・・でも、いやじゃないでしょ?」


俺は、その言葉を言われて覚悟を決めた方がいいのだと思った。

自分自身の気持ち。

それは、ずいぶん昔から決まっていた。


「遥、俺・・・子供のころからずっと好きだったんだ。

俺たち、付き合わないか?」


遥は、大粒の涙を零していた。

え、なんで泣くの?

胸が痛い。


「えへへ、嬉しい。

やっと言ってくれた」


俺は、胸をなでおろす。

そして、遥の頭を撫でた。

彼女は、頬を赤く染めていた。


「私も、奏ちゃんの事大好きだよ。

だから、ずっとそばにいて」


そうして、俺たちは幼馴染みの延長戦で恋人同士になった。

後から聞いた話なのだが、遥は学校では有能そうにしていたのはずっと集中していたからだったらしい。

張り詰めた学校生活は息苦しく家ではポンコツさ加減が酷くなっていたそうだ。

男子への塩対応は、俺と過ごす時間を邪魔されていたから。

まあ、それなら最初から学校でも仲よくすればよかったのではと思う俺だった。


-完-

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