ノアルプリンセス・ノアルミニスター

まれ

第1話

 学生である玲奈れなは突然道端で気を失った。

 玲奈が目を覚ますとそこは普段見慣れない建物の中だった。

 そこは広く、きらびやかでまるでお城の一間のようなそんな印象を受けた。

 なぜ、こんなところにいるのかわからない。たしか……。


 玲奈は思い出した。

「そうだ!私、道で意識が遠のいて、それで……。まさか誘拐⁉え?どうしよ、お金とか持ってない」

 焦る玲奈。額には汗がブワッと出ていた。

「あ、起きた?急にごめんね」

 女性のというより少女らしい声が左の方から聞こえた。

 左を向くとそこには美少女がお姫さまのコスプレをしてそこに座っていた。

 コスプレだと思ったのはきれいで透き通った金色の髪の上にサファイアのついたティアラが乗っていたから。あんなに大きい宝石はみたことがない。おそらく手作りだろう。レジンで作れば似たような物ができそうに感じた。肘の近くまで手先を覆い隠す白手袋も探せばあるだろうし、なければ作ればいい。それにテレビで見たことのない顔だったから多分普通に知らない人だろうと玲奈は考えた。

「あ、あの。私を誘拐しても何も持ってないし何も起こせないですよ?」

 玲奈は恐る恐るその少女に訊いた。

「誘拐?ああ、確かにそう捉えることもできますね」

 少女にこれが誘拐であると肯定された。

 ここからどうやって逃げればいいのか玲奈は必至に考えた。

「そんなに怯えなくてもいいですよ。あなたにやってもらいたいことがあってここに呼んだんですから」

「やってもらいたいこと?」

 この状況で怯えるなというほうが難しい。が、それ以上に重要なことを彼女は言った。やってもらいたいことというが気になった。要人の人殺しでもさせてしらばっくれるとかあとは他の犯罪を手伝わされ用済みになれば殺されるとかそんなことばかり玲奈は考えていた。

「そのやってもらいたいことが終わったら家に帰れますか?」

 玲奈は震え声で途切れながらも彼女にそう訊いた。

「今は帰れないわよ?」

 はっきりと彼女は言い切った。

 玲奈は顔ひきつらせた。

 家に帰ることができない=殺すと考えたからだ。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。何したかわからないけど、ごめんなさい。許して命だけは!」

 すぐさま命乞いを実行する玲奈。

「あの……、勘違いしてると思うの」

「へ?」

 その一言に玲奈は開いた口が塞がらなかった。



 そのコスプレ少女に勘違いしてると言われた玲奈。

 一通り説明を受けた。

 ここは玲奈がいた世界ではなく、いわゆる異世界であると。

 その異世界の国の一つである、ノアルタル王国。

 そのノアルタル王国国王の娘が彼女。つまり、彼女はお姫様だった。

 お姫様の名前はレア・ノアルタル。

 玲奈がとりあえず聞いた情報で理解できたことそれは、誘拐だと思ってたけど、異世界召喚だったということである。

「それで、やってもらいたいことってなんですか?」

 お姫様と聞いて、玲奈は彼女に対して敬語になった。

「そんな、急に敬語じゃなくていいですよ」

「いやでも……」

 さすがにお姫様にタメ口きくなんて恐れ多い。まだ殺されない保証なんてどこにもないのだから。

「私たちの身勝手でこの世界に呼んだのだから、最高の待遇をご用意してます。なので、私と同格と思っていただいて結構です」

 このとき『えー』と内心では思っていたことは玲奈の秘密ということでお願いします。

「じゃあ、条件があります!」

「なんでしょう?」

「私をお姫さまのお友達としてお姫さまが接してくださることが条件です。もちろん、お友達なので敬語は禁止です」

 玲奈は渾身の条件をレアに出した。

 実際はレアの方が身分も高いのに自分だけが軽々しく彼女にタメ口を使うなんて耐えられないと玲奈は思った。この国の臣下に殺されるかもしれないということも考えての条件だったのだろう。今の玲奈の行動理念は【とにかく殺されない】ことだから。

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