第7話
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葵は夜の喧騒を、仔犬を抱いて歩く。
仔犬もまた安心しきった瞳で葵を見据え、その身を任せていた。
「これから宜しくね」
そう仔犬に囁き掛けながら、ふと気付き歩みを止める。
「あっ! まずはアナタの名前を考えなきゃね……」
またゆっくりと歩みを進めながら、葵は仔犬に名前の提案をする。
仔犬にとっては何でも良いのだろう。
付けて貰えるなら、それが自分の名前となる。
――裏通り。
人影は少ない。
葵は気付いてはいなかった。背後から忍び寄ってくる者達の存在に。
何時からかは定かでは無い。
だがその者達は虎視眈々と狙いを定めていた。
「ねえキミ……」
背後から突如掛けられる声。
「はい?」
振り向いた矢先、その瞳に映る姿。
「えっ……と」
葵から戸惑い出た言葉は、少なくとも愉快なものでは無い。
葵は思わず後ずさる。
闇に映る六つの瞳は、本当に浅ましい輝きで葵を見据えていたからだ。
「ククク」
「へへへ」
不快で残忍なまでの声が木霊する。そして――
――追う者と追われる者。
仔犬の瞳に最期に映した光景は、その姿をしっかりと焼き付けていた。
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