図々しい

 年末年始、私も居候も偶然ほぼ同日に帰省することとなった。

 仕事は5日から始まるため、前日の夜か当日の朝帰って来るつもりだったが高熱を出してしまい移動するのも困難なためこちらに戻ってくることができず、仕事も休まざるを得なかった。

 土日を挟み、体調が回復したため数日遅れて自宅に帰ると居候に「……いま帰ってきたんだよね?」と聞かれる。

 本来なら私の方が居候よりも早く帰ってくるはずだったが、熱を出したため居候の方が早くこちらへ戻ってきていた。

 もちろん、昼過ぎの新幹線に乗って東京駅に着いてからそのまま自宅に帰ったので質問の意図がかわからず「そうだけど?」と私は答えた。

 すると、居候は続けて話し始めた。

 今朝夜行バスで帰ってきて、バスの中であまり寝れなかったから家に着いて寝ようと思い布団に入った。ふと目が覚めたとき、ロフトから寝息が聞こえてきたので(あ、いつの間にか帰ってきてたんだ)と思いそのまま二度寝したそうだ。

 その後、起きてから私のキャリーケース等がまだ無いことに気付いたらしい。

 私より早くこちらに戻ってきた居候が聞いた寝息は、誰の寝息だったのだろうか。何よりも、いないからって勝手に私の布団で寝るなという気持ちの方が強かった。

 その夜、普段よりもラップ音が酷かったのは嬉しさなのか怒りなのか、どちらなのだろう。


 改めて考えると、引っ越してきてから一番酷かったのはやはり金縛り等があった最初の1ヶ月ほどだ。

 そのあとは、居候の声で話しかけられたりと恐怖はあったがそれなりに上手く共存できていると思う。

 しかし、傾向を見るとひとつの個体だけでは無い気がする。


 まず、一番最初の時期。

 金縛りや激しい音があった。

 この時に一度実家に帰省し、実家で今まで聞いたことのない異音を聞いたためついてきてると感じる。

 しかし、その音を実家で聞いたあとは金縛りに一度もなっていない。激しい音も。


 次に居候の声を真似するもの。

 頻度は高くないが、かなり怖い。居候がいなくなったいま、どうなるのかわからない。


 あとは毎日鳴るラップ音。

 元気に部屋中鳴らす時もあれば、控えめに私の側で鳴らすときだけもある。

 時々、かなり大きめの音を出すが害はないし仕事中だからというと少し離れたところに移動してくれる。


 全て同じなのかもしれないが、やはり一番最初の時期と今が全然違う為最低でも2体はいる(いた)と考えている。


 最近、夜寝る時にキッチンとの間にあるドアを閉めておくと足音があまり聞こえないと気付き閉めて寝ている。

 しかし、先日布団に入って電気を消した途端ドアを思い切り蹴る音がした。

 もちろんドアの周辺に倒れるような何かは置いていない。朝起きて確認しても何もなかった。

 霊体なら普通にすり抜けることはできないのだろうか?

 蹴った音がした後、すぐにロフトで寝ている私の真横の壁からラップ音が聞こえてきたのでさらに謎が深まった。

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