第3話・俺によるチート変革の第一歩

 それにしても改めてやるとなるとどこか気恥ずかしさを感じてしまうのは俺の気の小ささ故だろう、と思いつつもチートは発動される。

 呼称ををMODと呼ぶことにしたチートは確かに眼前、太郎さんに発動された。一人の人間を作り替えるという本来の罪深さはどこか何の感慨も感じさせすに行われる。それはあまりにも現実離れしていることの地続きだから、きっと俺に現実を感じさせないのだ。

「ん……これで太郎さんの仙術適性を確認できました、すぐに見せますね」

「うむ、うむ、早く頼むぞ」

 急かされてしまう。新しい玩具を前にすれば当然か、では失礼しまして、と言って、いかにもと言った風にホログラムのようなものを作って見せる。



 『秋田太郎輝季』

全等級


霊の壱


陰の壱

陽の壱


火の壱

水の壱

木の壱

金の壱

土の壱


「これが太郎さんの現在の仙術を使う適性となります」

「……」

 太郎さんが極めて渋い顔をしている。さもありなん、いきなりこんなのが出てくれば思わずこんな顔をしても可笑しくはない。

「導師殿よ………」

「はい」

「読めん…これはなにを意味するのだ?」

 あ、うん、そこからですか………と思うが、考えてみたら不親切極まりない。初めてゲームのRPGをした人は、こういった未来普通になる表記も手探りで理解しながらやっていたのだろうか、と、なれば分かりやすく説明をせねばならない。

「それなら説明させていただきます、多少長くなりますが」

「構わぬ、はよう申せ」

「では………まず霊の壱というのは太郎さんの総合的な霊格、どれだけ仙人に近いかをさします、陰の壱は仙術を使うための霊力を溜め込める能力、陽の壱はそれをどれだけ大きな力で発言できるかの能力となります」

「ふむ?」

「んー、簡単に言うのであれば、陰は器、霊力をためる器で、陽は管、どれだけそこからくみ出して出せるかって事ですね」

「うむ、何となく分かった、あれだな、水源と水路の関係であるな」

「そうですね、それで火の壱から土の壱、までは、霊力を使って何を出来るか、という指針になります、例えば火の壱なら霊力で火をおこしたり、水の壱なら少し水を流してみせたり」

「ふむ………となれば導師殿が言った等級は、位が大きければよいと言うことか?」

「そうなります」

「なるほどのぉ………」

「それで、肝心の術の使い方なんですが」

「おおっ!待っておったぞ!」

「いくつか術の使い方はあるんですがね、まずは一つ、霊力をそのまま気に転用する術、二つ天神地祇や神仏に祈って力を貸してもらう術、それで最後は分かりやすく体型的な術」

「おおっ!色々あるのだな!」

 目を輝かせる太郎さんにどこか罪悪感を抱く。なんちゃって仙術を教えるとか詐欺かな、事実だけど。

「まず霊力ってのはなにかってところから………」

「いや、今は先に術の話が聞きたい!」

「あーわかりました、それなら説明しますけど、まずは気って言うのは身体にため込んだ霊力をもっと人間的な力にして使うんです」

「具体的に何が出来る?」

「そうですね、仙人とまではいかなくても、身体を金剛石のように固くしたり、人のみでありながら飛べたり…武器にまとわせて武器そのものを強化したり…武人の人なんかはかなり使うかも」

「俺のような人間にはまさに必要ではないか」

「そうですね、戦う人は覚えていて損はないかと」

「では気張って修練せねば………と話の腰を折ったか、次を頼む」

「えっと、次は神仏に頼む方法ですけど、これは霊力を込めて祈り神の力の一部を貸してもらうという術ですね」

「うむうむ、とはいえこれは馴染みあることのような………」

「霊力を込めるっていうのが大事ですし、何より使う霊力が神という存在相手何ですさまじい量が要ります」

「ほほう………まぁ、さもありなんなぁ」

「ま、鍛えて霊力をためる能力が上がれば神の力も結構借りれますし、毎日霊力捧げたりすれば特別に霊力を抑えてくれたり色々便宜を図ってくれますよ」

「なるほどなぁ……信者には優しくと言うことか」

「んで、最後にコイツを使います」

 と、見せたのは占いに使うような八卦の模様がついた図だ。

「これは?」

「さっき言った火から土までの五行の力をよりどう使うかですが、この八卦を使って術に仕上げます」

「ふぅむ」

「例えば火の力の出力を上げる、下げる、その場にとどまらせる、と言ったことはこの八卦……もといそこから派生する六十四卦を使ってやる訳です」

「中々頭を使いそうだ……荒くれ者などにはちとつらかろうな」

「ええ、これは勉学が出来るとより深く使えるようになるかと」

「いやこれは良い暇つぶしだ、楽しめそうだな」

「それなら良かったです」

「さて、導師殿、折角なのですぐ使ってみたいので教授を」

「あ、ちょっと待って下さいね」

「なんだ?」

 あ、露骨に不機嫌な感じになってる」

「せっかくなので実戦で使ってみませんか?」



 折角おもちゃを手に入れても思い切り遊べないのであれば飽きてしまうのは当然のように思い浮かぶ。対戦ゲームで対戦相手がおらずずっとCPU相手となればきっとつまらなく思うのは当然だから、そこまで用意してこそ、であろう。俺は太郎さんとその部下数名を連れて江戸の外にやってきた。

「導師殿………何故このような場所に?」

 そう言ったのは部下の武士だった。

「まぁまぁ、すぐに分かりますから………と、ここらへんかな」

 何もない所でわざとらしく言う。

「なにもないが………」

「まぁ、今説明しますからね………そも霊力ってのはこの大地からも発されるものなんです……んで、その霊力が時に残留思念と合わさってこういったものが出来る」

 俺は腕を振るって空間を叩いた、割れる音とともにひびが入る。何もない無に、亀裂そこからは何とも言えない空間が見えている。喉を鳴らす音が聞こえる、太郎さんとその部下たちからだった。

「昔はどこも追剥だとか、戦いとかがあってここもまた会ったんでしょう、普通はそんなのは地脈に乗った霊力の流れで祓われるんですが、たまにこういった場所が出来る、霊力のよどみが作り出した異界が」

「なるほど………それでこの異界で何をするというのだ?」

 太郎さんが聞いてきた。

「それはですね、俺たちで祓います」

「……われらは神主でもなければ僧でもないが」

「ごもっとも、でもこういうのは俺達でも出来るんです………異界には澱みの核、ヌシが居まして、それを退治すればこの異界も祓われて消えるわけです」

「………何だか信じられぬほどに簡単だな」

「ま、言うのは簡単ですから、まずは入ってみましょ」

「は、入る?この中に?」

「怖気づきました?」

 俺がそう挑発すると、

「武士にそんなものがあるかっ!」

 太郎さん…どころかその部下たちも顔を真っ赤にし、勇んで異界の中に入っていく。俺も置いて行かれないようにその異界の中に身を飛び込ませた。

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