江戸時代に飛ばされたのでチート使って江戸時代を伝奇的ファンタジーな感じに作り替えることにした
@navi-gate
第1話・江戸時代の俺。
何てこともなく死に、何と言うこともなく俺はよみがえった。一応くたばった際に神様とやらにあいチート能力とやらを頂いたのだがどこにほっぽりた出されたのか俺には見当もつかなかった、と、言うのもどこにとか言われずにただ最後に飛ばされたからである。
しかし俺が立っている場所が現代ではないのは明らかだった。道がある。ただし整備もされてるのかされてないのかただ草をよけた原始的な土の道だ。文明レベルが低いのか、それとも舗装されてない場所に飛ばされたのか、せめて何も言わず飛ばすにしても人のいる所に飛ばして欲しかった。
一度頭を掻いて歩きだす。見知らぬ場所で散策などどう考えても愚策なのだが、俺には楽して頂いたズルパワーがあるので、どうにもそこら辺を楽観視していた。牽制くらいにはなるだろう。と、そこまで考えてから思い出す。
本当に能力を使えるんだろうか?という疑問だ。もしかしたら神もチートも俺の夢幻でただの思い違いかもしれない。そうだったらこっぱずかしい。
仕方なしに、見当もつかぬままに集中して見せる。何でもいいから、怒れよ、と。
ボウと俺の中に何かが灯る気がした。活力が溢れて肉体に言いようのない何かが満ちる。手のひらを空に向け念じる。炎が現れた。熱を持ったエネルギーが風で揺れている。思わず感嘆の声を上げてしまった。誰もいないからでた間抜けな声だ。
「マジでチートか」
改めて自分がこのような立場になったことを理解した。この状況はまだ信じられないが、それでも現実だった。
「ってか、マジでここどこだよ」
道をダラダラと歩きながら時間をつぶした。今はいい、体力もあるし空腹でもない、だが時間がたてばあるものは減る、そうなれば後は死ぬしかない。お笑いだ。死んでまた死ぬとは喜劇にもほどがあるだろう。
「なんとか人、人と会いたい」
この際バーバリアンでもいい、チートパワーで何とかこういい感じにして見せるから…と、そんな俺の願いが通じたのか念願の人影が道の先に見えた。小柄で、しかし良い身なりをしてるように見え…思わず呆けた声が出た。
「え、えっと、お侍さん?」
「なんだ貴様、珍妙ななりをしておるでは無いか」
着流し?だったか、和服に腰には刀が2本………――侍じゃねーか、異世界じゃなくて過去の日本であった。多分江戸の頃だ。鎌倉だったらもう斬られてる。
「えぇ………あぁ、その、俺は」
「怪しいな、貴様」
男は俺より小さかった。この時代は栄養が不足している、それに獣肉を避ける(必ずしもとはいってない)文化だったからから十分な背丈はない。が、それでも日常が力仕事の時代だったから引き締まった筋肉で構成されているのが素人目にも分かる。ラフな格好の胸元は大きく膨れた胸筋が見えている。
「え、えっと、怪しくないっす、怪しく」
「そう言う人間ほど怪しい!」
至極その通りの事を言われてしまった。時代全員総ヤクザみたいな連中の時代に何で落とした!と、先程まで人を求めていた思考とは全く違う精神はまさに困った時の神頼み。こんなのではご利益も望めまい。
声を出す。ヤケクソ極まったまま言った。
「お、俺、導師ってやつなんです!!最近まで修行してたんで口が回らないの!」
そう叫んで、しばらく空気が凍り、そして男が笑い出す。
「貴様がっ!ど、どどどお導師!?へそで茶を沸かすわ!」
「ですよねー、でもそう言うことなんですよ!」
大嘘である。いや、チートはあるけども、男は1つため息をして言った。
「なら、その導師の術とやらを見せてみろ」
「え」
「当然だろうが、自称導師のえせ詐欺師かもしれん、しかし本当の導師なら仙術の一つも出来るのだろう?本物なら」
「あ、あはは、そっすね」
ごもっともな答えに乾いた笑いを混じらせて答えた。そう言われたならもうやるしかなかった。
「分かりました、術を見せますとも」
「奇術の類で誤魔化されんからな」
「大丈夫です、んー、例えば」
チートを発動させる、俺のはどうも結構応用が効くようなので、ちょっと驚かせてやろうと思った。相手の男を見る。着流しに二本差し、そして釣竿と水筒代わりのひょうたんが見えた。指をさす、
「そのひょうたん、中身は水ですか?」
「ん?おう、酒だったら尚の事良かったんだが」
「へぇ、酒好きなんですか?」
「当然よ!江戸の男たるもの酒が飲めねばな!」
実際は飲める奴と飲めないヤツが半々くらいらしい。と、言うのも日本全国から人が集まってくる。そうなると強い奴と弱い奴が混じってしまう。それは東京の話だったかもしれないが、変わらないだろう。江戸時代は強制単身赴任の参勤交代がある。
「そうですか、それならちょっとその水貸してくれますか?」
「なんだ、飲む気か?やらんぞ?」
飲まねーよ、
「違いますって、ま、曲芸ですが、ね」
頼み込み何とかひょうたんを借りる。
「じゃ、目を離さんで下さいよ!」
チートを発動。俺は水を操った。それは言葉通り水を自在に動か素ということで、それを空中でやって見せたのだ。
「あっ………」
その言葉が男の方から洩れた。流石にこれには驚いたらしい。十分だと思い、水をひょうたんに戻して男に返す。
「どうですか、これな証拠になるでしょ」
「信じられんが、しかし、いや、だが………」
「奇術は色々あっても、水を空に飛ばして動かすなんて出来る奇術師はいると思います?」
「そう、だな………恐れ入った」
男は意外にも素直にうなずいた。
「いやぁ、誤解が解けたならよかった!あ、そう言えば自己紹介まだでしたね、俺は…」
と、そこまで言って思った。考えてみたら導師って確か仙人修行する為に山とかにいるはずだ。なんでこんなところをほっつき歩いてるんだろうと言うことになる。考えても何も出てきそうにないので尊厳をかなぐり捨てることにした。
「どうした?」
「お、俺は、修行はしたけど酒食も女も断てずに仙人にはなれそうにないボンクラ導師!よろしく!!」
堂々と言うことではない、そんな雰囲気が男から見えた。
「お、おう、そ、そうか、お前みたいな奴もいるのだな………」
「お、俺が例外だから………」
気まずい沈黙、それを流すように男が咳ばらいをした。
「ま、まぁ、よい、俺は三春藩が………あ、あぁ~…太郎とでも呼べ!」
「わ、わかりました太郎さん、よろしくお願いします!」
「ははは、堅苦しくするな導師殿!そうだ、折角だ江戸の屋敷に行くとせんか?」
「太郎さんのお宅で?」
「まぁ、そうとも言えるかな、そうだ、道すがら導師殿の話でも聞かせてくれ」
◎
俺と太郎さんはゆっくりと歩きながら会話をした。と、言っても真実謎話せる訳もないから身の上を雑にでっちあげて、強いて言うなら実際の生きてきた時間を脚色して言うほかない。
「くはは、仙人になって霞を喰うのが嫌だから逃げるとは、赤本のような男だな、お前は!」
「笑わないでくださいよ、肉も魚も食えないなんて嫌ですって」
「生臭もここまで極まると痛快ですらある………ところで」
「はい?」
「俺も修行すれば仙人の術は使える物なのか?」
「……んー」
そこまで考えて少し声を詰まらせる。
出来ると言えば出来る、というより俺のチートは結構なもので、それこそ世界の法則を無茶苦茶に出来るくらいのチートだ、使って理解したのはMODとでも言うべきか、追加で色んな要素を足したりそれを使うことが出来るのだ。だから、この男に才能を組み込むことも可能だ。
「無理か?」
「んー、後で才能があるか調べましょ」
「ほ、本当か?!」
「基本的に人の龍脈さえわかれば才能の多寡は関係なく術くらいなら使えますし」
「お、おおっ!!そうなのかっ!?」
「ええ、そうです」
スーパーでっちあげであった。
「使い方は違いますけど最上は天仙、中級に地仙、なくても尸界仙くらいにはなれます」
「す、凄いなっ!どう指導の殿はどうなのだ?」
「俺あー、天仙くらいはありますよ」
見栄を張った、こんなランクに意味はない。
「すごいな………いや、早く帰らねばな!今日は宴会としよう!」
「宴会って、そ、そこまではいいですって!」
「何を言う、まさか本物の導師殿が居るとは思わなんだぞ?」
「それはそうですけど………」
「はぁ、俺も仙人の術か………」
そこまでか、と思ったが普通魔法が使えるとなったら大はしゃぎするに決まっているだろう。
「ま、まぁ、とりあえず才能見る所からね?」
「う、うむっ!そうだな!」
少しばかり恥ずかしそうに太郎さんが言った。流石に自分のはしゃぎように気付いたらしかった。
「しかし…導師殿ともなればもしかしたら上様にお目通りすることもあるやもしれんなぁ」
「上様………ああぁ、将軍様?」
「そうだ………修行をしてるとやはり浮世離れするものか」
「まぁ、それなりに………と、そうだ、もしよかったら服貸してもらっていいですか?」
「………ふむ、確かにその風変わりな服は目立つな、後で見繕おう」
「ありがとうございます、っと………それで、後どれくらいでお宅に付くので?」
「ん?ここからなら一刻(二時間)程度、近いぞ」
「へ、へぇ…」
2時間が近いとか、時間間隔が違い過ぎて笑えるのだが、考えてみたらそもそも時代が違うので些細な問題だった。
「ははは、導師殿はへばったのか?」
「まぁ、修行は仙術ばっかりだったので」
「身体も動かさんといかんぞ!そうだ、仙術の代わりに剣術を教えようか?」
「やっぱり侍だと治めてるんですね」
「俺はさむらいじゃ………あ、ああ、そうだな!嗜みだ!」
「それなら折角だし習ってみようかな!」
「ふふっ、これでも剣の腕はそれなりだと自負してるぞ!」
そんな他愛もない話をしていると、江戸の街に到着する。
「ここが………」
「おう、花の江戸よ!」
思った以上にさびれていると感じた。
おそらくそれは未来の姿を見ているからだろう。だが、そこはちゃんとかくして、
「ええ、凄いですね!」
大人の対処法である。波風を立てたところで意味がないならたてないに越したことはない。はぐれるなよ、と言われた。どうにも俺は珍妙な服を着たお上りさんにも見えるようだった。ある意味ではその見立ては正しいだろう。今の俺はある種究極のお上りさんとも言える。ただ実感がどこかついてこないだけで。そうして、いくつかの道を入って歩き、何人かにどこの大道芸の猿と見られながらも、太郎さんの家に遂に到着することが出来た。大きかった。俺が思っていた平屋の……時代劇にあるような長屋といった質素なものではない、大きく立派なお屋敷とでも言うべきか。そんなお屋敷の門前、見張り番と思しき人に軽く声をかけていた。鍵を開けているらしい。
「どうした、何をしている、行くぞ」
「あ、はい」
促されて後ろをついていく。何も悪いことをしていないのに、どこか背筋が痺れそうだった。
〇
今日を境に俺の江戸暮らしが始まる。
しかしそれは歴史を捻じ曲げ、どころか世界そのものを変革させることになるとは全く思っていなかった。
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