第37話 マリの想い

 私の名前は、マリ。エルフの女性で22歳です。フルネームはマリ イワン ノースウッディランドという大層な名前であるが、フルネームを名乗ることはあまりない。というのは、エルフの名前はファーストネームが名前でミドルネームは父の名前、ファミリーネームは出身国の名前になる。要は、ノースウッディランド出身のイワン所の子供のマリって言う意味なので、フルネームにあまり意味はない。

 エルフ族の寿命は300歳と言われており、人族の5倍生きると言われている。しかし、15歳になるまでは、人族と見た目年齢は変わらない。15歳以降は5歳で1歳分の見た目年齢が変わるので、22歳ではあるが見た目は16,7歳に見える。実は、精神年齢の進みも遅いと言われているだが、そこは個人差があるので、一概には言えない。見た目と年齢が違うので、17歳=85歳と思われる事があるが、私は22歳だ。そこんとこ間違えないように!って誰に言ってんだ。


 猫獣人のミャオと一緒にドリーマーというパーティを組んでいるのだが、今日は、再びブルースカイというパーティと再会した。ブルースカイのツグトには驚かされた。初めて会った時に、蝙蝠型魔物キーキーに追われていた時に助けてもらったのだが、その時にカルテットアローのアイデアを貰った。元になったウォータービーンズカルテットのアイデアを考えたのがツグトと言う事だった。今回も、力技で倒していた大口ワームの攻略方法をあっさり教えてくれた。大口ワームの口を開けた所を狙うとか、閉じた口の隙間が弱点とか普通は思いつかない。スケルトンも胸のプレートの裏に核があるって、あの魔物の弱点を見極める洞察力は、恐ろしいものがある。気が付いたら、

 「私達ドリーマーのメンバーとパーティを組んでくれないか?」

とお願いしていた。12歳と言っていたが、話をしていると大人と話をしている感覚に捕らわれる。あの年齢は、もっと我儘で自分勝手な行動をするものだが、一体どんな経験をして来たと言うのだろうか?ちょっと、恰好良いと思ったのは内緒だ。


 でも寿命の違う人族とであれば、後5年もすればツグトが17歳で私の見た目年齢が18歳になるので釣り合いが取れる。そもそも、エルフの結婚というのは、生涯連れ添うなどと言うものではない。子育てをするのに大体30年を目安にする場合が多い。エルフ同士の定番のプロポーズの言葉は、

「俺と一緒に30年のときを過ごさないか。」

である。エルフの産む子供は種族の違う連れ合いとの子であっても必ずエルフが産まれる。優性遺伝とか言っていたが、顔の作りなどは連れ合いの容姿を受け継ぐ場合があっても、長い耳と寿命に関しては、エルフのものを引き継ぐ。その代わり、エルフの男性が別種族との間に設けた子供は、エルフの特徴を持たない子が産まれる。但し、長命族の定めなのかエルフの女性が産む子供は、一人の相手に対しては一人しか子供が産まれない。


 ツグトは12歳との事であったが、精通しているのであろうか?もしそうなら、お姉さんが優しく導いてあげて、今から私好みに育てるのもありかも?おっと、私も未経験だ。導く様な経験は無かった。。。


 エルフの里から1人で出てきたのは、私の魔法の属性にある。エルフの多くは風属性の魔法が主体になっている。火の魔法は森の中では使えない。森の中で訓練できたのは、もっぱら光の矢(実は無属性)であった。火の魔法を思いっきり使って、自由に生きたい思いが抑えきれず、この街にやってきた。ミャオとは、この街で出会った。一緒にダンジョンに入った最初から、前衛と後衛で息が合った。4層までは、2人で順調に攻略できたけど、あの蝙蝠型魔物キーキーとは相性が悪かった。あの4層で1ヵ月足止めを喰らっていたのに、ツグト達と会って3日後には、クリアできたのだからツグト達には感謝しかない。


 明日の神の日は、ツグト達と合同で野営の準備で買い物に行く。料理の腕を褒められたのは単純にうれしい。このまま、胃袋を掴んでしまおう。月の日はケイトが講習会との事であったが、午前中に終わるとの事で、変則的ではあるが、午後からダンジョンに潜る事になっている。3泊する予定なので、食材も沢山買っておく必要がある。


***


 ツグトです。昨夜ゆうべ、マリさんの夢を見ました。マリさんは、ファイヤーアローを大口ワームに撃ち込んでいました。とても凛々しい姿に見惚れていると、こちらに気が付いたマリさんと目が合いました。とても悲しそうな眼で見ています。

「どうして、そんなに悲しい顔をしているの?」

 と聞くと、

「ツグト助けて、MPが切れた」

 そう言って倒れてきた体を、受け止めました。抱き上げた体をベッドに横たえます。何故か景色が部屋の中に変わっていました。横たえて布団を掛けようとすると腕を掴まれて、そのままベッドに倒れ込みました。気が付くと、口と口が繋がっていてマリさんに抱き付いていました。胸に柔らかい感触があたります。

「マリさん、駄目」

 と言おうとしても口が塞がれています。頭では否定していても腕は抱き付いたままです。そこで、目が覚めました。この日、初めて下着が汚れて気持ちが悪い経験をしました。朝から下着を洗って、朝の支度を済ませて出かけます。今日は、マリさん達と買い物に行く日です。

「おはよう、マリ,ミャオ,ケイト。」

 何とか、普通に挨拶ができたと思います。マリさんの姿が少し眩しかったのは秘密です。

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