第7話 ゴブリンの集落(4)

 出口に走っていき魔力を込めた剣で、入ってきたゴブリンの首を跳ね飛ばす。そのまま出口を飛び出し、右に居たゴブリンの首を突き、左のゴブリンを袈裟に切る。更に正面のゴブリンの首を跳ねた所で、後ろに居たゴブリンが叫びを上げる。

「ギャ、ギャギャギャ」


 残っていたゴブリンの動きが止まり、後ろに下がる。声を上げたゴブリンを見ると他のゴブリンより2回りは大きく、大人の体格をしている。しかも、皮鎧の様なものを着ており両手剣を持っていた。ゴブリンナイトだ。ゴブリンナイトは、中級魔物に区分され、通常ゴブリンの10倍の経験値が貰える変わりに、倒すのは10倍の難易度と言われている。回りを見回すと、右に3匹 左に4匹 真ん中にゴブリンナイトといった布陣で包囲されていた。そう、ゴブリンナイトはゴブリンの指揮を取り、攻める事で難易度は跳ね上がるのだ。MPが持たないので一旦、剣に流していた魔力を止める。恐らく、MPは20を切っている。次のレベルアップにはあと5体程度が必要と思われる。再度、周りを見回すと出口から出た所はちょっとした広場になっている。その奥は森に囲まれているが、道が2本繋がっている。空を見ると、日暮れが迫ってきていた。出勤していたゴブリン達の帰還の時間だ。手薄な右を破って、森に逃げ込めるか?と考えていたら、ゴブリンナイトが前に出てきた。逃がしてはくれ無いようだ。一番戦力の高い自分(ゴブリンナイト)が前で戦い、左右のゴブリンで牽制と包囲をさせる作戦の様だ。

 すり足で、右に右に回り込む。隙を見て右のゴブリンを襲う構えを見せるとゴブリンナイトがカバーするように動く。動いた瞬間に逆の左側に切り込み、1匹のゴブリンを横に薙ぐ。

「ギャッ、ギャ」


 ゴブリンナイトが声を上げると、残りの6匹が更に下がり逃げ出そうとしたときに牽制だけをする動きに替わる。ゴブリンナイトを倒すしかないようだ。ゴブリンナイトを中心に右に右に回り込み、体の向きを変えようとした隙を狙い右から横薙ぎに3回上段下段中断の順に切りつける。3連撃にゴブリンナイトは無造作に両手剣を合わせる。ゴブリンナイトのレベルが高いので、全て簡単に弾かれた。呼吸を整えて、上からの切り下ろしを繰り出す。弾かれた剣を構え直し袈裟切りを繰り出す。再度弾かれたのを横薙ぎに変えて連撃を加えていく。10合、20合、30合を数えた時点で、後ろに飛び下がる。

「ふー、ふー、ふー」


 呼吸が持たない。しかもゴブリンナイトは攻撃を弾いているだけで、ダメージは一切ない。今度は、ゴブリンナイトが攻撃を仕掛けてきた。上からの振り下ろし、下手に受けると受けただけでダメージを負いそうだ。「ブン!」


 風圧を右に感じて、ギリギリで躱す。振り下ろしの体制から切り上げが来る。しゃがんでこれも躱す。体が流れたのを見て、しゃがんだ状態から脛に切りつける。浅く剣が通った。初めてのダメージだ。深追いはせずに後ろに下がる。身長差があるので足元の攻撃が有効のようだ。こちらから上段、袈裟懸けの攻撃をフェイントにして、右からローキックを繰り出す。ローキックがヒットした。そこからは、足元への切りつけとキックを重ねていく。大きなダメージではないが、地道に嫌な攻撃を続けていると、足元への攻撃にいら立ったゴブリンナイトが叫び声をあげながら大振りの上段切りを繰り出してきた。

「グォー!」


 迫ってくる剣圧に耐えながらギリギリまで待って右に躱し、躱しざまに防具に守られていない左ひじをカウンター気味に切り上げる。左ひじから先が飛んでいく。すぐさま、振りあげた剣を右から袈裟懸けに切りつける。首に刃が入った所で、

「ガキ!」

 と音を立てて、剣が折れた。身体強化と剣への魔力の流し込みを続けていたが、ここに来てMPが切れてしまった。MPが0になると、それ以上はMPを使えなくなる。魔力切れによる昏倒など体への影響がないのが救いだ。剣は折れたが、最後の攻撃で、ゴブリンナイトが倒れていく。

「レベルアップしました」


 ゴブリンナイトを倒したことで、次のレベルアップができた。有り難いことに、これでMPがMAXに戻る。最後の予備の刀に持ち替えて、残ったゴブリンを倒していく。統率が取れなくなったゴブリンを倒して、道に駆け込もうとした時、

「ゴウッ」


 駆け込もうとした道から炎の玉が飛んできた。咄嗟に魔力を流したままになっていた剣で炎の玉を切り裂く。

「スパン!」


 魔力を流した剣であれば魔法を切り裂くことができる。勿論、高レベルの魔法は自分のレベルでは無理だがファイヤボール程度の低級魔法なら可能だ。ファイヤボールが飛んできた方向を見ると、杖を持ったゴブリンメイジが見えた。普通のゴブリンも従えている。


 もう一方の左側の道を見ると、そちらはゴブリンナイトに率いられたもう一隊のゴブリンが見えた。

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