叱咤激励

叱咤

自分が嫌いだ。

なんの可能性も自分に対して見出すことができない。

肉体的にも、精神的にも、何もかも劣っている。

素晴らしい志を持ったところで、どれだけ努力しようが何の結果も出せない。

ユーモアセンスもなく、ふざけたところで滑ってしまう。

他者の幸福を自分の幸福に変えることもできない。

文武共に才能がなく、何かをしたところで徒労に終わる。

死にたくても死ぬ勇気も出せず、そのくせ軽薄な自殺者を馬鹿にする。軽薄で馬鹿な自殺者より、もっと自分の方が劣っているのに。

思想に頼っても本質的には救われず、宗教を馬鹿にする。

ほんとうに幸福になんてなれないんだ。

ほんとうにしあわせなんてなれないんだ。

ほんとうの成功なんて得られないんだ。

「病んだ」とかいう言葉が嫌いだ、だってあんなの自己表現だもの。

民主主義が嫌いだ、だってみんな敵だもの。

政府が嫌いだ、だって偽善者だけだもの。

恋人達が嫌いだ、だって自分は絶対なれないもの。

父が嫌いだ、自分を期待するもの。

母が嫌いだ、自分をあきらめたもの。

妹が嫌いだ、わざと自分を怒らすもの。

親戚が嫌いだ、お世辞でおだてて自分を調子に乗らせたもの。

自分が嫌いだ、なにひとつ価値を見出せないもの。

お前は障碍者なんかじゃない！

安心しろ、ADHDでもASDでもない健常者だ。

お前が社会に溶け込めないのも、友達ができないのも、全部性格のせいなんだ。

お前はほんとうは改善できるはずなのにしてないんだ。

屑め。死ね。

救いなんてない。

どこにもほんとうの救いなんてない。

立山連峰を、新幹線の窓から眺めた。

山々は猛スピードの新幹線を恐れずに、ただじっとしていた。

ニーチェのいう超人は、きっとああいうものなんだろうな。

そう思いながら、目を閉じた。