悪童
Aiinegruth
Sinkー1
宇宙に誕生があったのなら、死は生より自然であると思う。
自然にのみ、ほかの自然を内包することが許される。
彼女はよく死ぬ。
いつも沈んでいく感覚がある。陽の座す、夕暮れ。亜南極、旧ケルゲレン海台の中央に、雲天を割る輝きが堕ちた。光は巨木の折り重なった網目からなる水平に波及すると、窪んだ中央孔を通って地下に入り込む。炸裂は、その三秒後だ。腹に響く天地の怒号。格子状の
椅子に座ってレバーを引く。キィイイインという足元の動作音と共に、点灯。重い衝撃が身体を打てば、青い照明の照らす両壁面が爆発的な勢いで後方に過ぎ去り、続く長い空洞を私入りの
降り立った
持ち上げる。金属面に張り付いた粒子がきらめきを返し、無数の管理画面を映したドーム天井に吸い込まれていく。首飾りのなかから取り出した別の粉末と一緒に、今度は灰を頭上に放る。また、同じように消えていく。手で掬い、足で蹴り、投げる、消える。投げる、消える。
地球文明は、一度ほとんど滅んだという。物質的にも非物質的にも、人類が
完全に干上がったケルゲレン海台に、かつての青を取り戻す。そんな使命を帯びた
「おつかれさま、ルビスコ。また撒いていたんですか?」
「
首に手を回されて、後ろから抱きしめられた。匂いと感触でわかる。形を取り戻したばかりの、一糸まとわぬ姿の女性だ。
青いウェーブがかった髪に、整った顔立ち。身長一七〇センチほどでグラマラスな肢体まで備えた彼女は、私の褐色の肌に白い腕を添わせて、鉄の
中間地点、『1-1ⅰ乙層』駅舎で停車する。海台中央方向を見やり、息をのんだ。見下ろせば、もうほとんど修復の終わりかけているドームは巨大な種子であり、そこから海が樹立している。
「あとほんの少し数が揃えば、注水し、
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