Ēlysion online 〜おっさんの自由奔放旅模様 

ハラショット

第1話  おっさん話題のVRMMOゲームを手に入れる

とある会社のオフィスで、ある男がパソコンに向かってカタカタとキーボードを叩く音が暗闇の中、静かに響いていた。

時計はすでに11と12の半ば過ぎまで針が回っていた。

「上司の野郎、人に仕事ほとんど押し付けて帰りやがってよクソが。」

「週休が1日あるだけマシだけど仕事の量が頭おかしいんだよ」

ブツブツと文句を言いながらも着々と仕事を終わらせていき、日付が変わって少し経った頃、

「あ〜やっと終わった〜。」

と言い、男はパソコンの電源を落とし、鍵を閉めて、オフィスから出て行った。      

街灯が男の体を照らし出した、

この男の名は鈴村犬助すずむらけんすけ

今年で30と少しのおっさんである。

犬助は小走りで家まで帰宅し、荷物をリビングに放り投げて、寝室に入った。

ベッドに寝転がりながら、明日も仕事だしさっさと寝よう…と思い目を閉じて夢の中に旅立とうとした時に思わぬ邪魔が入った。

「うるせぇなぁ、もう。」

眠りを妨げてきた奴は何処のどいつだ、と思い確認すると、予想外の人物からのメールだった。なんで急にコイツがメールしてくるんだよと思いながらも、メールの中身を確認した。

「ねぇ犬助、ゲームしようよ!!」

「唐突すぎないか、伊藤」

「今何時だと思ってるんだ」

「1時!!」

「寝かしてくれ」

「嫌だ!!」

「ガキか」

この女の名前は伊藤千歳いとうちとせ

清楚系のモデル兼女優として、テレビにもよく出演する有名人だ。

俺とは就職して地元を離れるまではよくゲームなどを遊んでいた。

いわゆる幼なじみというやつだ。

まぁ、俺とは9歳年が違かったから妹の面倒を見ていたような感じだな。

もう2年ぐらい連絡をしていなかったのに何故今になってメールをしてきたのか不思議でならない。まぁ、ゲームは好きだし、一人よりも二人で遊んだ方が楽しいのだが、疲れているし、何より

「最近、ゲームがつまらなくなってきたんだ、いわゆるマンネリってやつ」

「えっ、犬助がゲームがつまらないって言うなんて頭大丈夫?病院行く?」

「至って正常だわ」

「なら安心」

この様な会話から始まり、仕事の話や最近あった面白いことなどたわいのないことを喋っているうちに、一番最初の話題に話が戻ってきた。

「けどストレス発散の方法がゲームか酒かタバコしかない犬助にとってゲームがつまらないって死活問題じゃない?」

「まぁ、そうだな。医者から酒とタバコは控える様に言われちまったから、ガチでヤバい」

「ゲーム関連の話繋がりで、犬助VRMMOゲームに興味はない?」

「まぁ、あるけど、ゲーム機本体が高いから手が出しにくいんだよな」

「ふ〜んそうなんだ〜」

「なんだ?」

「なんでもな〜い」

「明日の仕事ってテレワーク?」

「そうだけどどうした?」

「明日はなんか良いことあるかもよ〜」

「そうだといいがな」

「私明日ドラマの撮影があるから寝るね〜」

「はいはい、おやすみ」

「おやすみ〜」

思った以上に長く話し込んじまったな…

スマホの時計を見ると2時30分を少し超えていた。

明日の仕事テレワークだがいつもの時間に仕事を始めないと、仕事のノルマが終わらない。

そう思いながら、目を閉じ、今度こそ夢の中に旅立った。

「ゔゔ、ふぁあ〜」

大きく伸びをして、ベッドから起きる。

洗面台に行き、歯を磨いて顔を洗う、キッチンにいき朝食を作り、モソモソと食べる。

少し休んでから仕事部屋に行きパソコンの電源をつけ、いつものように仕事を始める。

仕事がほぼ終わった頃、

ピンポーン

今日は誰かが来る予定は無いがいったい誰なんだ?そう思いながら犬助はドアカメラを確認すると、緑の制服を着こなした某宅配業者のお兄さんが居た。

「宅配で〜す」

「お疲れ様で〜す」

「サインお願いします〜」

「は〜い、どうぞ」

「ありがとうございました」

荷物を受け取ってから気づいたが俺なんか頼んだっけな…

リビングに荷物を置いて中身を確認すると目を疑った。

どこからどう見ても新品のVRMMOゲーム機本体とゲームカセットが入っているからだ。

「これは夢か何かか?」

自分でも信じられない、俺が買おうと思っても、半年我慢して買えるかどうかのやつだぞ。在庫切れ続出のやつだぞ。

そうして宇宙に旅立っている俺をスマホからの着信音が元に戻した。

何故だろう根拠はない、だがなんとなく予想がつく、そう思いながらメールを開く。

「驚いた?」

「宇宙に旅立つぐらいには驚いた」

「よっしゃ!」

そうだったコイツ、俺の年収を1ヶ月程度で稼ぐようなやつだった。

「けどなんで伊藤が在庫切れ続出のこいつを送ってこれたんだ」

「あ〜それは、ひ・み・つ、それはそれとして一緒に入れておいたゲームカセットをダウンロードしておいてね〜」

「まぁいいけど」

「確か明日は、犬助お仕事休みだったでしょ」

「そうだな」

あっ、この流れはなんか嫌な予感がする…

「じゃあ今日の10時から一緒にゲームやろうね〜」

「わかった」

「約束だよ!!じゃあね〜」

そのメールの後にゲームのマップの写真が送られてきた。

どうやら丸で囲まれた場所が集合地点らしい。

はぁ、大変な事になった…

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